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日本国憲法の理念に反する高市政権の方針に抗議する議長声明
 2025年10月20日、自由民主党と日本維新の会が「連立政権合意書」を取り交わした。そして、翌21日、日本維新の会が閣外協力するいわゆる連合政権の形で、高市早苗自民党総裁を内閣総理大臣とする内閣が発足した。
 「連立政権合意書」やその後に高市政権が示した方針は、平和や立憲主義、基本的人権を脅かすものが多数含まれ、日本国憲法の理念に反しており、看過できない。

 「連立政権合意書」は、両党が今まで主張してきた憲法改正のうち憲法9条改正や緊急事態条項に関する両党の条文起草協議会の設置や、衆参両院の憲法審査会での条文起草委員会の常設を明記しており、憲法改正を推進する姿勢を明確に示している。
 憲法9条への自衛隊明記改憲は、当部会が2017年11月26日付「自衛隊を明記する憲法9条の改正案発議に反対する決議」で指摘したとおり、自衛隊を憲法9条2項のコントロールが及ばない存在にしてしまい、違憲な戦争法(安保法制)を事後的に追認するなどの重大な問題点があり、日本国憲法の恒久平和主義や立憲主義を破壊するものである。
 また、緊急事態条項の創設は、当部会も参加する改憲問題対策法律家6団体連絡会の2022年4月6日付「あらためて緊急事態条項創設改憲案に反対する法律家団体の緊急声明」が指摘したように、立憲主義と民主主義を破壊する大きな危険性を持つものである。
 衆議院で改憲勢力が総議員数の3分の2を大きく下回っているにもかかわらず、日本の恒久平和主義、立憲主義、民主主義を破壊する憲法改正の推進に執着する高市政権の方針に、当部会は断固として反対する。

 「連立政権合意書」には、日本の軍事大国化に向けた内容も含まれている。すなわち、安保三文書の改定前倒し、長射程ミサイルなどの整備による敵基地攻撃能力の保有、原子力潜水艦と理解される「次世代の動力」を活用した潜水艦の保有、武器輸出の全面解禁を意味する「防衛装備移転三原則の運⽤指針」の5類型撤廃、武器開発・製造の国営⼯廠化などを明記している。
 さらに高市首相は、2025年10月24日の所信表明演説で、防衛費のGDP比2%増額目標達成の前倒しや2026年末までの安保三文書の改定を表明した。
 高市政権が推進しようとする急速な軍拡政策は、憲法が定める平和主義に反するだけでなく、盲目的に軍事を優先することによって市民の生活を破綻させるものとして生命・自由・幸福追求の権利(憲法13条)や生存権(憲法25条)をも侵すものであり、許されない。

 「連立政権合意書」には、その他にも日本国憲法の理念に反する以下のような内容が含まれている。
 「OTC類似薬」の保険適用見直しは、患者の負担を激増させるものであり、生存権(憲法25条)を脅かす。
 「日本国国章損壊罪」の制定は表現の自由(憲法21条1項)を侵害する可能性が極めて高く、インテリジェンス・スパイ防止関連法制の策定はプライバシー権(憲法13条)や政治的表現の自由(憲法21条1項)に反する危険性が高い。
 同一戸籍・同一氏の原則を維持しながらの旧姓使用の拡大は、選択的夫婦別姓制度の実現を阻止しようとする内容であり、自己の意に反して氏名の変更を強制されない自由(憲法13条)に反するとともに、憲法24条1項および2項にも反する。
 原子力発電所の再稼働推進は、地震大国である日本において安全性が確保されているとはいえない以上、生存権(憲法25条)を脅かすのみならず、再生可能エネルギーの拡大という世界的潮流にも反している。
 外国人に関する違法⾏為への対応と制度基盤の強化は、排外主義を煽動しかねないものであり、差別されない権利(憲法13条、憲法14条1項)を侵すものである。
 人口減少に伴う大学数および規模の適正化は、特に地方における教育を受ける権利(憲法26条1項)を脅かすものである。
 企業団体献金の取り扱いを保留としている点は、日本の議会制民主主義を歪めるとともに企業・団体を構成する個人の政治的信条を侵害する企業団体献金を温存につながる。しかも、高市首相は、自民党議員の裏金問題の全容解明を行うことなく、いわゆる「裏金議員」を副大臣や政務官に多数起用しており、自民党の金権腐敗に対する反省が全く見られない。
 政党法の検討を進めるとする点は、公権力によって反対派政党の政治活動の自由が侵害される危険性があり、結社の自由(憲法21条1項)を脅かすものである。
 1割を目標とする衆議院議員の定数削減は、多様な民意を忠実に国会に反映させる機能を失わせ、国会の代表民主制(憲法前文、41条)の機能を弱めることにつながるものである。

 加えて、高市首相は、自民党総裁就任時に「ワークライフバランスを捨てる」と発言していたが、2025年10月21日には厚生労働大臣に対して労働時間の規制緩和の検討を指示した。
 そもそも現行の残業時間の上限規制はいわゆる過労死ラインを超えるものであるにもかかわらず、この規制を緩和することは、労働者が過労死するリスクを高めるものであり、労働者の幸福追求権(憲法13条)、生存権(25条)、勤労の権利(憲法27条1項)を侵すものである。

 高市政権の上述のような方針は、市民の権利や生活よりも軍拡や統制を優先する極めて危険な内容であり、極右的とも評価すべき政治姿勢である。
 当部会は、日本国憲法を擁護し平和と民主主義および基本的人権を守る立場から、これらの高市政権の方針に強く抗議するとともに、これらの方針に基づく個別の立法や政策に対しては、立憲主義と民主主義を守るすべての市民や団体、政党と連帯して対峙していくことをここに表明する。
2025年11月5日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議長  田村 優介
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