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第7次エネルギー基本計画に抗議するとともに、
脱原発を伴う再生可能エネルギーの拡大の実現を求める決議 |
1 2025年2月19日、石破内閣は、国のエネルギー政策の指針を記した第7次エネルギー基本計画(以下、「基本計画」という)を閣議決定した。
基本計画では、福島第一原発事故以降、我が国のエネルギー政策における前提であった「可能な限り原発依存度を低減」するという方針を転換し、脱炭素の名の下に原子力エネルギーを再生可能エネルギーと共に「最大限活用」することとした(14頁)。
2 基本計画においては、「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた、 不断の安全性追求」が、原子力政策の出発点であるとしている(35頁)。
しかし、福島第一原発事故をめぐる損害賠償請求訴訟において、国はその責任を全面的に争っており、事故の予見可能性及び結果回避可能性を否定している。すなわち、国は、福島第一原発事故の発生は、「やむを得ないもの」であると認識しているのであり、そのような立場をとる者が、「福島第一原発事故の教訓」を標榜しても、全く説得力はない。
基本計画は、津波対策、電源多重化、耐震強化、竜巻対策、火災対策、多様な冷却手段の確保、フィルタベントの設置等を踏まえた安全対策の強化などといった、事故の教訓を踏まえた新規制基準に基づき、安全対策の強化を進めているという。
そして、新規制基準に適合すると認められた川内、高浜、伊方、大飯、玄海、美浜、女川及び島根の各原発において、再稼働が進んでいる。
しかし、この規制基準が安全であるという保障はなく、東海第二原発や女川原発、島根原発などでは、規制基準に盛り込まれていないいざというときの避難計画の不備も指摘されている。特に2024年1月に発生した能登半島地震においては、多くの家屋が倒壊し、道路も通行不能となり、万が一原子力災害が発生した場合、避難不可能な状況が起こりうるということが示された。
このような不確かな「安全性追求」では、いつ、また福島第一原発事故のような過酷事故が発生しないとも限らない。
3 次に問題となるのが、原子力発電所の運転によって生み出される高濃度の放射性廃棄物の処分の問題である。
基本計画においては、中間貯蔵施設等に貯蔵された使用済燃料は、最終的には六ヶ所再処理工場へ搬出し、核燃料サイクルを推進するという方針のもと、そのために必要となる同工場の安全性を確保した安定的な長期利用を進めるとする(38頁)。
しかしながら、六ヶ所再処理工場は、27回も工事完成が延期されており、いつ稼働可能かも不明である。仮に稼働に至ったとしても、すでに老朽化しているため、安全性に疑問があり、大量の放射性物質を環境中に放出する恐れがあるなど、さまざまな問題が残っている。
核燃料サイクルにおいてとりだされるプルトニウムについては、プルサーマルで消費できる量はごくわずかであり、使用済みMOX燃料の処理もできない。
このように不安定かつ危険性を含む核燃料サイクルからは直ちに撤退すべきである。
4 そして、基本計画は、「脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む」と、原発の新設を促進するとする(41頁)。福島第一原発事故による甚大な被害が生じ、いまなお故郷に帰還することができない住民が多数存在しているにもかかわらず、原発依存度を低減させるどころか、新たに原発を新設する方針を示す基本計画は許容することはできない。
5 基本計画は、「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から得られた教訓や我が国が培ってきた経験に基づき、世界における原子力安全の向上や、原子力の平和的利用、核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うとともに、地球温暖化対策に貢献していくことは我が国の責務であり、世界からの期待でもある」と述べる(42頁)。しかしながら、我が国に期待されているのは、唯一の戦争被爆国であり、福島第一原発の事故を経験した国として、脱原発を達成しつつ、地球温暖化を防ぐため、再生可能エネルギーの拡充に尽力することである。
当部会は、脱原発を伴った再生可能エネルギー拡大の実現に向け、第7次エネルギー基本計画に抗議・撤廃に向けて力を尽くしていく。 |
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2025年3月15日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 常 任 委 員 会 |
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