律家会弁護士学者合同部会
Japan Young Lawyers Association Attorneys and Academics Section
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【声明】日本学術会議の解体をめざす「日本学術会議法案」に反対し、撤回を求めます
 「わが国の科学者の内外に対する代表機関」であり、「学者の国会」とも呼ばれて日本の学術や社会の発展に重要な役割を果たしてきた日本学術会議をめぐり、3月7日に「日本学術会議法案」が閣議決定され、国会に提出されました。これは現行の日本学術会議法(1948 年)を廃止し、学術会議を「特殊法人」化しようとするもので、成立すれば、「科学に基礎づけられた情報と見識ある勧告および見解を、慎重な審議過程を経て対外的に発信して、公共政策と社会制度の在り方に関する社会の選択に寄与する」(日本学術会議憲章)という学術会議の性格・役割が完全に変わり、実質的に解体されることになります。

 「法人化」をめぐり、これまで学術会議は、ナショナル・アカデミーに求められる5要件(学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性・独立性)を満たしておらず、学術会議の独立性・自律性の観点から深刻な懸念があることを繰り返し指摘してきました。しかし今回提出された法案は、このような懸念・指摘を完全に無視する内容となっています。新法人の「運営における自主性及び自律性に常に配慮しなければならない」との条文はありますが、それを具体的に担保するための手立ては一切記されていません。むしろ法案には、内閣総理大臣が任命する「監事」や内閣府に設置される「評価委員会」、会員外の者から成る「選定助言委員会」や「運営助言委員会」など、5要件に照らして学術会議側が「到底受け入れ難い」と表明してきた事項がすべて盛り込まれており、学術会議の活動を人事・運営全般にわたって幾重にも縛り、直接間接に政府の統制下に置くことがめざされています。学術会議の設置形態を変更するとともにその性格を完全に変えてしまうこのような法案が、学術会議による度重なる懸念の表明を無視する形で国会に提出されること自体が異様であり、法案は撤回されるべきと考えます。

 今回の学術会議「法人化」計画の源には、2020 年 10 月、菅義偉首相(当時)が6名の会員候補者の任命を拒否した事件があります。長年にわたって定着した法解釈と運用を無視して、学術会議が推薦した会員候補の任命を理由を示すこともなく拒否したことは学術会議法の定めに反する違法行為であり、国民から強い批判の声が上がりました。しかし政府は、自らの誤りを正そうとしないばかりか、その後も学術会議への圧力を一層強め、時の政権の意のままになる存在に作り替えようとする試みを続けてきました。現行の学術会議法自体を廃止し、学術会議の設置形態を国の機関から「特殊法人」に変えることをつうじてその性格を完全に変質させようとする今回の法案は、政府によるこのような試みの集大成といえます。これは実質的には「学術会議潰し」の動きというべきものであり、決して許してはなりません。

 学術会議は第二次大戦後、戦前の日本では学問の自由が保障されず、学術が権力に従属し動員されていたために戦争や軍国主義を止められなかったという反省の上に、科学こそが「文化国家の基礎」であるという確信に基づき、「わが国の平和的復興、人類社会の福祉」に貢献することを使命として設立された組織です(学術会議法「前文」)。「国の機関」であると同時に政府等から「独立して」職務を行ない、科学的知見に基づいて時の政権に対しても対等な立場から意見を述べるという現在の学術会議の性格・位置づけは、学問の自由を守り抜くことで社会の健全な発展を保障するという重要な使命を果たすためのものであり、民主主義や平和の問題とも密接に関わっています。学術会議は 2017 年に、「軍事(戦争)目的の研究」は行なわないことを宣言した 1950 年および 1967 年の声明を継承する旨を確認し、軍事と学術との接近に警鐘を鳴らす声明を発して注目を集めましたが、「法人化」され政府の統制下に置かれることになれば、このような原則的姿勢を貫くことは困難となるでしょう。むしろ、「法人化」によって学術会議を実質的に解体しようとする動きの背後には、「デュアルユース」(軍民両用)研究の名のもとに軍事研究を推進し、日本の科学者、学術全体を戦争に動員しようとする狙いが存在すると考えられます。このような観点から見て、今回の法案によって平和な文化国家としての理念に言及した現行学術会議法の前文が消滅すること、また、独立行政法人等の法規を借用する形で、自由で公開された審議を旨とする学術会議の性格にはそぐわない会員の秘密保持義務や罰則が法案中に明示的に書き込まれていることなどは、深く危惧されるところです。科学者を政府の統制下に置き、軍事研究をふくめ、国策の推進に動員しようとするこのような政策が、日本の学術全体のあり方を歪めること、ひいては真理探究に欠かせない精神的自由や科学的・客観的姿勢を失わせることによって、社会の活力を奪い、その発展を阻害するという結果をもたらすことは明らかです。

 以上のことから私たちは、学術会議の事実上の解体をめざす「日本学術会議法案」に反対します。
 政府に対しては、この法案を撤回するとともに、学術会議に対する一切の不当な介入・圧力を中止することを求めます。また、政府が現行学術会議法を誠実に遵守し、2020 年に任命を拒否された会員候補者をすみやかに任命することによって、6 名の欠員という違法状態を解消することを要求します。
 また、科学者や学会・協会のみならず、広範な市民のみなさん、さまざまな団体・組織、社会全体が、学術会議をめぐる事態は学問の自由、さらには民主主義や平和のゆくえに関わる重大問題であるという観点から今回の法案に反対し、学術会議の独立性を守るために声を上げることを期待します。
 さらに、とりわけ国民の代表として国会に集う諸政党には、日本の学術・社会全体の発展において重要な役割を担う学術会議の独立性を脅かす法案の危険性を直視し、さまざまな立場・党派の垣根を越えて対話・協働し、議論を重ねて、この法案を廃案に追い込むべく力を尽くされることを期待します。
2025 年 3 月 13 日
大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム
学術会議会員の任命拒否理由の情報公開を求める弁護団
立憲デモクラシーの会
「稼げる大学」法の廃止を求める大学横断ネットワーク
軍学共同反対連絡会
学問と表現の自由を守る会
安全保障関連法に反対する学者の会
日本戦没学生記念会(わだつみ会)
許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!改憲・教育破壊 全国ネットワーク
日本科学者会議
大阪歴史教育者協議会
教育科学研究会常任委員会
改憲問題対策法律家 6 団体連絡会
安保体制打破新劇人会議
日本学術会議の会員任命拒否の撤回を求める中野区民の会
日本民主法律家協会
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