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日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞を歓迎するとともに、
日本政府に対し、核兵器禁止条約の批准及び被爆者に対する国家補償を
求める決議 |
1 日本被団協のノーベル平和賞受賞
2024年10月11日、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した。
ノルウェー・ノーベル委員会は、被爆者からなる日本被団協が、核兵器のない世界の達成に向かって努力を重ね、被爆者の証言を通じて核兵器を決して使用してはならないという「核のタブー」の規範確立に大きく貢献したと賞賛している。被爆者の「体験をとおして人類の危機を救おうという決意」(1956年8月10日結成宣言)に基づく日本被団協の運動が、国際社会において高く評価されたといえる。
当部会は、日本被団協のノーベル平和賞受賞を心より歓迎するとともに、日本被団協や被爆者の方々による長年にわたる核兵器も戦争もない世界の実現を目指す運動に対して、最大限の敬意を表する。
2 核兵器禁止条約の批准及び第3回締約国会議への参加を求める
日本被団協は、2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と連携して、核兵器禁止条約(核禁条約)の成立、普及に大きく貢献してきた。
核禁条約の前文には、締約国は「被爆者hibakusha」が受けた「容認し難い苦しみ及び害」に留意し、核兵器廃絶のために「被爆者が行っている努力」を認識して合意に至ったと明記されており、核兵器の非人道性及び核兵器廃絶運動における被爆者の主体性が強調されている。日本被団協は、世界に先立って、核兵器廃絶を唱えてきた。極限的な自衛状況における核兵器の威嚇・使用の違法性の判断を回避した国際司法裁判所の勧告的意見よりも踏み込んで、核兵器の使用・保有を全般的に禁止している核禁条約は、日本被団協の核心的な主張が盛り込まれたものといえる。
日本は被爆国であるにもかかわらず、核禁条約に署名しておらず、締約国会議へのオブザーバー参加すらしていない。日本政府はその理由として、アメリカの核の傘にあること、核保有国と非保有国の分断を招くことを挙げている。しかし、NATO加盟国のノルウェーや、アメリカと核共有をしているドイツ、オランダ、ベルギーですら締約国会議にオブザーバー参加しており、日本政府の言い分は破綻している。
2025年3月3日〜7日には、核禁条約の第3回締約国会議が予定されている。石破茂首相は、日本被団協のノーベル平和賞受賞を受け、会議へのオブザーバー参加を検討すると述べた。
当部会は、日本政府に対し、核禁条約の第3回締約国会議への参加を求めるとともに、速やかに条約を批准することを求める。
3 被爆者への国家補償を求める
核禁条約は、被爆の苦しみは被爆者にとって容認し難いものとしている。これは、「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の「意見」で示され、1994年の「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」でも維持されている戦争被害受忍論を否定するものである。
日本の政府及び司法が、被爆を含む戦後補償問題で維持してきた、民間人の戦争被害は特別の犠牲にあたらないというこの受忍論は、憲法13条、14条、29条等に反する。
当部会は、日本政府に対し、日本被団協が1984年に「原爆被害者の基本要求」を策定し政府にその実施を長年求めてきたことに応えて、被爆に対する国家の責任を認め、国家補償に応じるように強く求める。
4 核兵器のない世界をめざして
ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ侵攻において核兵器の使用が示唆される現在は、キューバ危機以来、「核のタブー」が最も揺らいでいる状況にある。
このような状況であるからこそ、人命のみならず動植物の生命、地球環境も巻き込んで甚大な被害を長期にわたってもたらす核兵器の使用・威嚇を絶対的に禁止し、核兵器を廃絶するという人類にとっての課題を果たさなければならない。
当部会は、日本被団協、被爆者と連帯して、日本が核禁条約を批准して核兵器廃絶に取り組み、かつ、国際社会が核兵器廃絶及び被爆者への補償・支援を進めるための活動を行うように求めることを、ここに決議する。 |
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2024年11月24日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 3 回 常 任 委 員 会 |
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