律家会弁護士学者合同部会
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改憲を許さず、政治資金規正法の抜本改正を行い
健全な民主政治を取り戻すことを求める決議
1 岸田総理大臣が改憲に意欲を示していること
 岸田総理大臣は、2024年5月30日、民間団体が開催した集会に出席し、「憲法改正が先送りできない重要な課題となる中、国民に選択肢を示すことは政治の責任だ」「国民に早期に選択肢を示すため、憲法審査会などで具体案をベースに議論が進むことを期待しており、自民党としても国会発議に向け議論が前に進むよう全力で取り組んでいく」と述べ、改憲に意欲を示した。
 岸田総理大臣の発言と呼応するように、2024年通常国会では、衆参憲法審査会が開催され、自民党議員から、改憲案の条文案起草のための委員会を設置することなどが提案された。
 現在自民党は、立法事実に乏しい議員任期延長を中心とする緊急事態条項創設という改憲を目指しているが、それが許されないことは、すでに当部会が指摘してきたところである。

2 自民党の政治資金規正法違反が蔓延していたこと
 自民党の5派閥は、政治資金パーティの収入の一部を政治資金収支報告書(以下、「報告書」という)に記載せず、さらに、パーティ収入の一部を派閥が議員の政治団体や議員に「キックバック」をし、または議員側が収入の一部を留保して派閥に渡しており、これらについても議員の政治団体の報告書に記載していなかったことが判明している。このようにして、自民党は組織的に「裏金」を作っていたのである(以下、裏金に関与していた自民党議員を「本件議員」という)。本件議員は、衆議院51名、参議院31名、選挙区支部長3名に上る。
 政治資金規正法は、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的」として、政治資金の使途公開や収支などの公開などのルールを規定している。
 自民党は、組織的かつ継続的に、報告書に不記載を行ってきたのであり、「政治活動の公明と公正を確保」するという意思もなければ、「民主政治の健全な発展に寄与する」意思もないことが明らかになったと言わざるを得ない。
 自民党裏金事件の最大の問題は、裏金の使途が明らかにされていないことである。
 本件議員のなかには、有権者に高級クッキー缶を贈答していたり、地方議員に現金を配布したりした者も判明しており、裏金が公職選挙法上違法とされる有権者への違法な寄付、違法な選挙費用などとして使われた可能性が強く疑われる。そもそも、適法な使途のために費消されたのであれば、裏金とする必要がないからである。
 本件議員の多くは、裏金を政治活動に使用したなどと説明しているが、使途を裏付ける領収書が添付されていないことが多く、また、使途を不明とした議員もおり、裏金の使途が明らかにされたとは到底言えない。
 さらに、本件議員の中には、裏金を自身が代表を務める党支部に寄付をし、所得税の所得控除または税額控除を受けている者もおり、これは、本来支払うべき税金の支払いを免れることであり、かつ、裏金を事実上、議員個人の所得に変換し、私腹を肥やすもので許されない。
 政治資金規正法からすれば、本件議員は、裏金を違法な使途に使っていないということを証明する責任を負うものであり、また、裏金を作るようになった経緯、すなわち、組織的に政治資金規正法に違反する状況を作ってきた経緯については、自民党が明らかにしなければならない問題である。

3 自民党裏金事件は、憲法の問題であること
 上記の通り、裏金が違法な買収資金や選挙資金として使われたことが疑われ、本件議員の当選が、選挙人の真意の正当な表現の結果と断定できず、本件議員が、「正当に選挙された」(憲法前文)議員とはいえるかは、重大な疑義が生じている。公職選挙は、民主主義の根幹をなし、公明、適正が厳粛に保持されなければならないからである(最高裁平成8年7月18日判決参照)。
 本件議員の議席を除けば、現在、両議院の改憲派議員の人数は3分の2以上に達しておらず、改憲案発議の要件は満たしていない。すなわち、現在の国会は、改憲案発議を行う民主的な正統性を有しておらず、改憲を行う資格はない。
 現在の急務は、改憲ではなく、むしろ、自民党裏金事件の真相解明、政治的責任の追及、及び、政治資金規正法の抜本改正により、裏金事件の再発を防止することである。
 これにより、自民党裏金事件により毀損された民主主義を正常化しなければならない。
 とりわけ、いわゆる政策活動費は、使途が公表されず、政治活動以外の目的に使われている可能性があるため廃止されるべきであるし、企業・団体による献金、政治資金パーティの対価の支払いは、与党が政策を金で売るという側面があり、民主主義を毀損するものであり、禁止されるべきである。
 これに対し、自民党の一部議員などから、「政治に金がかかる」などと裏金問題を正当化する議論がなされている。しかし、現職国会議員は、歳費、文書交通費、公設秘書の費用などが国費で賄われている。また、政党交付金導入時には、企業・団体献金を禁止することが予定されていたが、日本共産党を除き、政党を通じて政党交付金を受領しながら、企業・団体献金も受領しているのである。国際的にも、日本の国会議員の歳費等の額は少額とはいえず、政策活動費、企業・団体献金、政治資金パーティの対価の支払いは、上記弊害があることからすれば、禁止しなければならない。

4 与党による政治資金規正法の改正について
 2024年6月19日、自民党、公明党が賛成し、改正政治資金規正法が成立したが、同法は抜本的な改正ではなく、企業・団体による献金、政治資金パーティは禁止しておらず、「政治活動の公明と公正を確保する」という政治資金規正法の目的を実現するには不十分と言わざるを得ない。
 立憲民主党及び日本共産党がそれぞれ提出した政治資金規正法改正案は、企業団体献金の禁止、企業団体による政治資金パーティの対価の支払いの禁止、政策活動費(選挙運動を除く)の廃止などを提示しており、両党の法案をベースとした政治資金規正法改正がなされるべきである。

5 結論
 以上より、当部会は、改憲を決して許してはならないことを指摘するとともに、政治資金規正法の抜本改正なく、政治資金規正法の抜本改正により、健全な民主政治の回復を果たすことを目指し活動することを決意する。
2024年6月30日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 5 回 定 時 総 会
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