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今こそ、日本国憲法の平和主義実現に向けた取り組みを
全力で推し進める決議 |
一 岸田政権をはじめとする改憲勢力による、日本国憲法の平和主義を破壊する動きが急速に強まり、着々と進められている。
2024年1月に召集され、先頃閉会した通常国会において、日本国憲法を改憲するための憲法審査会が開催された。この中では、立法事実に乏しい議員任期延長を中心とする緊急事態条項の議論がなされ、改憲条項案作りの動きも提案された。
しかしより深刻なのは、わが国を軍事国家化する現場の動きとそのための法制化が急速に進められ、事実上の憲法破壊が進められていることである。
二 2022年12月に閣議決定された安保三文書によるわが国の軍事力増強が進められ、沖縄県の南西諸島を中心に軍事基地化が進められている。
同時に、岸田政権は、「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定による殺傷兵器の輸出解禁とPAC3の輸出決定、全国583カ所に及ぶ土地利用規制法による区域指定、全国の民間空港・港湾の「特定利用空港・港湾」への指定を行ったほか、2023年度から5年間で総額43兆円もの防衛関連予算をつぎ込む計画の一環として、2024年度の防衛関連予算を過去最大の7兆9496億円とした。
そして、岸田首相は、2024年4月に訪米し、アメリカのバイデン大統領と会談した。4月10日に発表した日米共同声明は、わが国が「反撃能力を保有する決定及び自衛隊の指揮・統制を強化するために自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含む、防衛力の抜本的強化」を行うことなどが宣言されている。
それを受ける形で、国会では、5月10日、自衛隊の陸海空の各部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の創設を内容とした改正防衛省設置法と、秘密の対象を拡大し、広範な民間人をセキュリティ・クリアランス(適性評価)の対象とする経済安保情報保護法が成立した。
加えて、岸田政権は、国の地方自治体に対する包括的指示権を認める地方自治法改定案を提出、同法案は、6月19日に成立した。
三 こうした動きは、わが国が、抜本的な軍事力強化を行いつつ、軍事作戦におけるアメリカとの統合をはかり、軍需産業を育成させ、また、国民の自由や、地方自治体の自治権をないがしろにしてでも、軍事体制への円滑な国民の協力体制を作るための体制を着々と備えるものである。これらは、アメリカと一体となった戦争国家体制への邁進というほかない。
この動きは、日本国憲法の平和主義について明文改憲をする以前から、憲法の平和主義を骨抜きにしていくもので、いずれは空洞化した日本国憲法の平和主義の存在意義を問い、それを改変していく策動につなげていくものである。
四 しかし私たちは、それを許すことはできない。現在世界各地で行われている紛争、ウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻などを見れば、戦争がその現場に暮らす者の命と生活を奪うこと、軍事力強化等の動きがこうした人権侵害を深刻にすることはあっても、解決することにつながらないことは明らかである。私たちは、改憲策動に異を唱え、日本国憲法の平和主義を発展させる取り組みに邁進する以外に、こうした人権侵害を避ける方法はないと確信している。
五 当部会は、基本的人権の保障と民主主義の尊重とともに、日本国憲法の平和主義の発展のために活動している。
本総会では、自衛隊の内部における人権問題や、世界における平和を求める大きな運動の存在を学んだ。また、青年法律家協会が1954年の創立から70周年を迎えたことを受け、「青法協 平和と人権基金」が創設された。
この基金を用いて、今年8月には、若手会員らによる南西諸島の軍事基地化の状況の現地調査を予定している。当部会は、本総会で学んだことを生かし、改憲勢力による日本国憲法の平和主義の破壊に異を唱え、この現地調査の内容を広く全国に伝えていくことをはじめとする日本国憲法の平和主義の発展のための取り組みを、全力で推し進めることを、本総会の機会において宣言するものである。
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2024年6月29日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 5 回 定 時 総 会 |
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