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入管法改正案の強行採決に反対するとともに、国際人権条約に
違反する強制送還及び収容制度の廃止を求める決議 |
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1 強行採決など立法過程における問題
2023年6月9日、多数の問題を抱えた「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」(本改正案)は、参議院本会議で採決され、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの賛成により成立した。それと同時に、立憲民主党、日本共産党、れいわ新撰組、社会民主党、沖縄の風が提出、審議されていた「難民等の保護に関する法律案」(難民等保護法案)なども廃案となった。
本改正案の参議院の審議において、送還忌避者の増減に関する統計がないとの答弁、令和2年度以降の送還忌避者の縮減目標は設定していないなどとの答弁がなされたが、いずれも虚偽であることが判明した。
また、参議院法務委員会理事会で合意した「柳瀬房子難民審査参与員の処理件数及び勤務時間」については2021年から2022年分までしか提出されず、しかもその提出されたものだけでも、難民審査請求の20%から25%を上記参与員が担当していることが判明する一方、年に0件から数件の案件配点しかなされていない参与員が存在することも判明するなど、難民の生命を預かる最後の砦である審査請求において、その配点自体に参与員に著しい偏りがあることが明らかになった。
また、柳瀬房子参与員が2019年11月11日「送還収容に関する専門部会」で「1500件」を判断し、2021年4月21日、衆議院法務委員会で「2000件」を判断したが、いずれにおいても難民がほとんどいないなどと述べていた点について、1年6ヶ月で500件を対面したこととなり、現実には不可能であり、虚偽の答弁ではないかとの批判が生じた。
しかし、法務大臣は2023年5月30日、1年6ヶ月の間に500件審査を実施することは「可能」であると発言した。もっとも、この点も、同日、夜には「不可能」の誤りであったと訂正するなど混迷を極めた。ついには、2019年から2020年の柳瀬参与員の処理件数は提出直前ではあったものの、国会に明らかにされないまま、強行採決がなされ、審議は打ち切られたのである。
上記のとおり、本改正案は、立法過程においても、虚偽答弁、さらには虚偽ではないかとの重大な疑いがかけられた答弁などが封をされるかのように、強行採決されたのである。
民主主義とは少数意見との審議を前提とするものであり、この点に重大な瑕疵があると言わざるを得ない。
2 国際人権条約に違反する改正案であること
成立した入管法は、以下のとおり、国際人権条約に違反するものである。
@難民認定申請が3回目の場合などには、その迫害の危険を判断するまでもなく強制送還することができるようになり、難民条約33条1項 、拷問禁止条約3条 をはじめとする庇護を求める人を迫害の危険の及ぶ地域へ送還してはならないとの「ノン・ルフールマン原則」に違反する。
A入管法は、監理措置制度、3ヶ月ごとの収容の要否を検討する制度を導入したとしても、原則収容主義、無期限収容、司法審査なき収容であることには何ら変わりはなく、恣意的拘禁を禁止する自由権規約9条1項に違反する。
B実刑1年以上の拘禁刑に処された者に対して、在留特別許可を禁止したことは、自国に在留する権利を含む自由権規約12条4項、比例原則により家族結合に対する侵害を判断すべきと解される自由権規約17条に明らかに違反する。
以上のとおり、成立した入管法は、日本が批准する国際人権条約に違反するものであり、直ちに法改正による是正がなされるべきである。
3 在留資格の有無を問わず人権が保障される入管法の真の改正に向けて
そもそも、現在の政府入管は、在留すべき人と送還すべき人の判断が適正にできていない。
そこで、@「難民」であるか否かを適切に判断するためにも、難民保護委員会のような政府入管から独立した難民認定機関の設置、調査の際の録音録画・弁護士の立ち会いなどが必要である。
A「在留特別許可」を得るべきか否かを適切に判断するためにも、処分要件を具体的に定め、かつ、児童の最善の利益、家族結合などの人権の「重み付け」について法律で定めるべきである。退去強制令書が発付された後の在留特別許可の見直しの制度の整備も必要である。
B「収容」については、その身体拘束が必要最小限度のものとなるべく、「逃亡し、または逃亡するに疑うに足りる相当な理由が認められるとき」などの具体的な要件を定め、ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパ諸国と同様に(イギリスは判例法の制約、アメリカは原則的な収容期限を有する)収容期間に上限を設けるとともに、事前又は定期に自動的な司法審査を導入すべきである(ドイツは事前の司法審査、フランス・イタリアは一定期間の経過後の司法審査、イギリス・カナダは一定期間の経過後の準司法審査)。
当部会は、2020年12月5日に「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言等に反対する決議」、2021年6月27日「入管法改正案の廃案を歓迎すると共に、現行入管法の非人道的取り扱いの改善を求める決議」を発してきたが、当部会は、あらためて、政府・国会に対して、現在の入管収容施設内での非人道的取り扱いの改善など、上記野党案を踏まえ、現行入管法を、国際法に適合し人権を擁護する内容に改正するよう求める。 |
2023年6月25日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 4 回 定 時 総 会 |
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