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東京電力に対し、中間指針第5次追補を踏まえ、被害者に対し、
早期かつ十分な賠償をすることを求める決議
1 福島原発事故による被害が現在も残っていること
 2023年3月で、福島原発事故(以下、「本件事故」という)から12年が経過する。しかし、被災者・被害者の避難生活はいまだに続いている。
 2022年は、長らく帰還困難区域であった地域に設定された特定再生復興拠点区域の避難指示の解除がされ(22年6月12日葛尾村、22年6月30日大熊町、22年8月30日双葉町)、23年春ころにかけて、さらなる解除も予定されている(浪江町、富岡町、飯舘村)。
 しかし、これら解除された区域は帰還困難区域のごく一部に過ぎず、この区域に帰還しても、除染が進んでいない帰還困難区域の周辺区域での生活とならざるをえないし、コミュニティも復活しておらず、本件事故前のふるさととは根本的に変わり果ててしまっている。本件事故から12年が経過し、新たな生活圏のなかで生活している被災者、被害者にとって、避難指示が解除されたからと言って、直ちに帰還できるわけでもない。

2 中間指針第5次追補の策定
 このように、本件事故による被害は現在も続いており、これまで、その被害の賠償を求め、全国で30を超える損害賠償を請求する集団訴訟が提起された。当部会の会員も、各地の集団訴訟の弁護団として多く関わっている。
 東京電力は、中間指針(追補を含む)を超える賠償を頑として拒み、中間指針を超える損害賠償を認める判決が相次いだ後も、控訴、上告をして争い続けた。
 2022年3月、最高裁は、中間指針を超える損害賠償を認める複数の高裁判決に対する東電の上告を棄却し、上告受理申立を不受理とする決定を下し、中間指針を超える損害賠償を認める判決が確定した。
 これを受け、東京電力はようやく中間指針を超える損害賠償を始めるに至った。
 また、原子力損害賠償紛争審査会(以下、「原賠審」という)は、最高裁判決を受け、中間指針の改定の必要性を認め、被害者の声を改めて聴取し、2022年12月20日、東電に対し追加の賠償をさせるべく、『中間指針第5次追補(集団訴訟の確定判決等を踏まえた指針の見直しについて)』(以下、「第5次追補」という)を出した。
 この第5次追補は、上記集団訴訟で尽力した原告団、弁護団の努力のたまものである。
 原賠審は、地方裁判所、高等裁判所で中間指針を超える損害賠償を認める判決が相次いだ時点で、中間指針を改定し、被害者の早期救済を図るべきであった。そのため、第5次追補の策定は遅きに失したと評価せざるを得ない。
 とはいえ、第5次追補は、「生活基盤喪失・変容による精神的損害」として、高裁判決で認められたふるさと喪失・変容慰謝料と同種の賠償を定めており、そのほか、避難指示が出されていない区域などでの賠償額の増額などもあり、判決の成果を被害者にあまねくいきわたらせるという意味では、一定の前進があったと評価できる。
 他方で、必ずしも第5次追補の賠償水準が高いとは言えないこと、避難指示区域以外の区域の賠償水準はいまだに低いものであること、法律上当然に発生する遅延損害金について触れられていないなど、さらなる前進も不可欠である。

3 東京電力は被害者に対し、早期かつ十分な賠償をしなければならないこと
 東京電力は第5次追補を受け、2023年3月を目途として、受付開始時期や請求方法等の賠償基準の詳細についてプレスリリースすると発表しており、賠償基準の策定に取り掛かっているようである。
 第5次追補は賠償の最低基準であり、これを下回る基準を策定することは許されないが、これを上回る基準を策定することは否定されない。
 各地の判決では、第5次追補を超える賠償水準を認める判決もあるのだから、東京電力は、第5次追補を最低基準とし、各地の判決を踏まえて、被害実態に合致したより適切な賠償基準を策定するべきである。
 また、第5次追補は遅延損害金について言及していないが、遅延損害金が発生していることは、法律上当然のことであり、東京電力は、被害実態に合致した損害額元金のみならず、遅延損害金も賠償しなければならない。
 さらに、第5次追補の賠償水準を下回る賠償額を認める判決が確定した原告についても、第5次追補によって損害があることが確認されたのであり、東京電力は、この原告についても賠償しなければならない。
 加えて、本件事故から12年が経過し、それでもなお被害が継続していることから、心身に新たに被害が生じている被害者もいる。このような実態に鑑み、東京電力は、賠償をするに際し、清算条項を盛り込む合意書を作成し、これに署名押印しなければ賠償しないという態度をとることは許されない。

4 まとめ
 よって、当部会は、東京電力に対し、中間指針第5次追補を踏まえ、被害者に対し、前項を踏まえた、早期かつ十分な賠償をすることを求めるものである。
以上
2023年3月11日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 拡 大 常 任 委 員 会
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