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『日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案』
(公選法並び3項目改正案)の拙速な審議採決に反対する法律家団体の声明 |
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2022年4月22日 |
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター |
共同代表理事 |
海 渡 雄 一 |
自 由 法 曹 団 |
団 長 |
吉 田 健 一 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会 |
議 長 |
上 野 格 |
日本国際法律家協会 |
会 長 |
大 熊 政 一 |
日本反核法律家協会 |
会 長 |
大 久 保 賢 一 |
日本民主法律家協会 |
理 事 長 |
新 倉 修 |
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衆議院憲法審査会では、「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(以下「改憲手続法」という。)について、令和元年(2019年)5月8日成立及び令和4年(2022年)3月31日成立の改正公職選挙法3項目に並べて改正する法案提出の動きが出ている。改憲問題対策法律家6団体連絡会(以下、「6団体連絡会」という。)は、以下の理由から、上記改正法案の衆議院憲法審査会での拙速な審議と採決に強く反対する。
1 「公選法改正並び」の3項目についてのみ今国会で改正を急ぐべき理由がないこと
上記改憲手続法改正案は、@悪天候で離島から投票箱を運べなかった経験を踏まえた開票立会人の選任に係る整備、A投票立会人の選任要件の緩和、BFM放送設備による憲法改正案の広報放送の追加の3項目について、公職選挙法改正にそろえるためと説明されている。しかし、今回の改正案は、場当たり的で非合理な改正案と言わざるを得ない。離島の投票環境の向上は重要だとしても、開票立会人についての整備だけでは不十分なことは明白である。また、投票環境の改善は離島に限られず、ほかにも議論すべきことは山ほどある(2021年4月20付慎重審議を求める6団体連絡会声明ほか)。3項目のみを急ぎ改正すべき理由は全くない。
2 改憲手続法の本質的問題点(附則4条の措置)が全く議論されていないこと
昨年6月11日、公選法並びの7項目の改正改憲手続法が、「施行後3年を目途に」、投票人の投票環境の整備に関する事項、有料広告、資金規制、インターネット規制など、国民投票の公正を確保するための事項について「必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」とする附則4条が加えられて成立した。憲法改正国民投票は、主権者である国民の憲法改正権の具体的行使であり、国民に平等に投票の機会を保障し、公平公正を確保する手続きであることが憲法上強く要求されている。
ところが、自民党は、附則4条の措置についての議論を棚上げにし、法制上の措置を講じなくても改憲発議(憲法96条)は可能と強弁している。CM規制などの改憲手続法の本質的な欠陥を放置したままで憲法改正発議をすることが憲法上許されないことは国民主権原理から自明であり、附則4条の改正議論は優先して行われるべきである。3項目の改正が済めば自民党は、附則4条1項の例示事項の改正を終えたことを理由に、その余の本質的欠陥是正の立法審議には応じない危険性がある。
3 3項目改正案の拙速採決は、自民党が狙う憲法9条改憲の環境を整えるだけであること
以上のとおり、今回突如浮上した公選法並びの3項目の改憲手続法改正案を急ぎ成立させるべき立法事実は全くない。3項目改正案の審議採決は、衆議院憲法審査会で自民党が狙う憲法9条改憲の議論の道を開き促進するだけの意味しか持ちえない。 |
以上 |
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