律家会弁護士学者合同部会
Japan Young Lawyers Association Attorneys and Academics Section
〒160-0004 東京都新宿区四谷2-2-5小谷田ビル5階
TEL 03-5366-1131 FAX 03-5366-1141
お問い合わせ  リンク 
MENU
トップページ

青年法律家協会とは
□弁護士学者合同部会

□入会手続のお問い合わせ

弁学合同部会の活動
    □決議/声明/意見書

    □委員会の活動

    □人権研究交流集会

イベント・学習会
のお知らせ
□イベントカレンダー

修習生のみなさんへ
□事務所説明会のお知らせ

法律家をめざす
みなさんへ

出版物のご案内

□機関紙「青年法律家」

リンク

少年法改正に対して抗議する決議
1 少年法改正に抗議する
 少年法等の一部を改正する法律(以下、「本改正法」という。)が本年5月21日、参議院本会議で可決、成立した。しかしながら、本改正法は、下記のとおり、未だ成長発達過程にある少年の健全な育成を期するという少年法の理念を大きく後退させるものであり、結果的に少年の更生を阻み、再犯を助長しかねないことから、当部会は、断固として成立に抗議する。
 すなわち、本改正法は、@18歳・19歳を「特定少年」と名付け、原則、家庭裁判所に送致された少年事件を再び検察官に戻す(逆送)となる事件を、強盗、強制性交、放火など短期1年以上の刑にあたる罪に拡大し、A逆送され公判請求された18歳・19歳について、氏名・住所など本人を推定できるような情報を報じる推知報道を解禁し、B18歳、19歳の虞犯は処分されないものとし、C18歳・19歳には、不定期刑を適用せず、資格制限を受けることになるなど、現行少年法を大きく後退させる内容となっている。


2 本改正法の問題点
(1)18歳・19歳(特定少年)の逆送事件の拡大
 少年法は、未だ成長発達過程にあり、可塑性を有する少年について、成人のような刑罰を課すのではなく、家庭裁判所の主導による保護処分によって少年の健全な育成を期することを原則としている。少年事件は、虐待や不適切養育、生まれ持った資質など、少年自身にはいかんともしがたい背景があるケースが多い。少年に成人と同じ刑事責任を問い、その行為・結果の軽重のみを重視して罰することは、不遇な境遇に生まれ育った少年に対し、不遇な境遇への責任を問うことになりかねないものである。
 この点、少年法適用年齢引き下げの議論は、そもそも選挙権年齢及び民法の成人年齢引き下げに伴って始まったものであるところ、年齢要件は、それぞれの法律の趣旨や立法目的等を考慮し個別に検討されるべきものである。脳科学者からも、18歳・19歳はまだまだ未成熟で発達途上にあり可塑性が高いので、大人と同じ責任非難を負わせるべきではないとの意見が呈されているところである。
 したがって、18歳・19歳について、原則逆送とする事件範囲を拡大することには大きな問題がある。

(2)推知報道の解禁
 18歳・19歳について、推知報道が許されることとなれば、現代におけるネット社会では、たちまち実名や住所が拡散され、半永久的に消せない烙印が押されることになりかねない。本来であれば、その可塑性に鑑み、保護処分により「育ち直し」の機会が与えられるべき少年が、更生どころか、社会から抹殺されかねない状況となることが考えられる。また、起訴された少年被告人について推知報道がされてしまった後に、保護処分に付するのが相当であるとして家庭裁判所に移送された場合には、取り返しのつかない事態となることが想定される。

(3)虞犯少年からの適用除外
 少年法は、非行の芽を早い段階で摘み、少年が将来において罪を犯すことがないよう、その危険性が高いと思われる虞犯を処分している。18歳・19歳を適用から外すことは、彼らに対する早期の適切な保護や環境調整を行うことが出来ないこととなり、ひいては、18歳・19歳が罪を犯してしまうことをみすみす見逃すことになる。

(4)資格制限
 ひとたび罪を犯してしまった18歳・19歳に医師、弁護士、公務員等の資格制限を課することは、彼らの社会復帰を阻むだけでなく、彼らの将来に向けた意欲、ひいては更生への意欲をも削ぐことにもなる。また、可塑性を有する18歳・19歳は、その更生のスピードも区々であるため、成人の刑罰のような定期刑を硬直的に課すことは、少年の社会復帰を遅らせることになりかねない。


3 少年の健全な育成に資する少年法へ
 以上のとおり、本改正法には多くの問題点がある。本改正法はその付則において、改正法施行から5年後に、社会情勢などの変化を踏まえ、制度のあり方を見直すことを規定している。今後も、これら問題点について、さまざまな角度から厳しく注視し、18歳・19歳の「育ち直し」が妨げられることのないよう検証を行い、見直しについて積極的に議論すべきである。
 当部会は、本改正法成立に断固抗議するとともに、更なる改悪を阻止し少年の健全な育成に資する少年法への真の改正を図るべく、活動を継続していく所存である。
2021年6月27日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 2 回  定  時 総 会
 ページトップへ    前ページへ戻る

トップページ 青法協とは 弁学合同部会の活動 イベント・学習会 修習生のみなさんへ 法律家をめざすみなさんへ 出版物
(c)2012,Japan Young Lawyers Association Attorneys and Academics Section. All rights reserved.
掲載中の文章・写真およびデータ類の無断使用を一切禁じます。