律家会弁護士学者合同部会
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土地利用規制法の成立に抗議し、廃止を求める決議
1 土地利用規制法の成立
 2021年6月16日、土地利用規制法こと「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下、「本法」という。)が参議院で可決、成立した。
 本法は、内閣総理大臣に対し、「重要施設」の敷地の周囲おおむね1000メートル以内や「国境離島等」の区域内に「注視区域」や「特別注視区域」を指定したうえで、その区域内における土地及び建物の利用について、調査や勧告・命令の権限を与えるものである。
 しかし、以下述べるとおり、本法には憲法上の問題が多数存在しており、違憲であると言わざるをえない。

2 基本的人権を侵害するおそれが大きい
 本法は、「注視区域内」の土地等の利用状況の調査に関して、内閣総理大臣が求めた場合には、関係行政機関や関係地方公共団体等に対して、「土地等の利用者その他の関係者に関する情報」を提供するよう義務づけている(本法7条)。
 また、「注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者」に対して、内閣総理大臣は「報告又は資料の提出」を求めることができ(本法8条)、拒否した場合等には罰則が設けられている(本法27条)。
 そして、内閣総理大臣は土地等の利用者に対し、「重要施設」や「国境離島等」の機能を阻害する行為の用に供し又はその明らかなおそれがあると認めるとき、「必要な措置をとる」ように勧告・命令できるとされ(本法9条)、命令違反には罰則も設けられている(本法25条)。
 さらに、「特別注視区域」における一定以上の面積の土地の売買契約等には、内閣総理大臣への届出が義務づけられており(本法13条)、これにも罰則が設けられている(本法26条)。
 以上のような本法の規定は、内閣総理大臣に思想信条を含む広範な情報収集を認める点で個人のプライバシー権(憲法13条)や思想・良心の自由(憲法19条)を侵害するおそれが大きい。また、調査や勧告・命令への懸念により、土地等の関係者による運動や表現行為を萎縮させる効果があることから、表現の自由(憲法21条)を侵害するおそれも大きい。そして、勧告・命令によって土地等の利用を制限し、売買契約等に届出を課す点は、土地等の利用者等の財産権(憲法29条)を侵害するおそれもある。
 このように、本法は様々な基本的人権を侵害するおそれが大きい。

3 刑罰法規として明確性を欠く
 本法は、土地等の利用に関する「報告又は資料の提出」も(本法8条)、土地等の利用者に対する「必要な措置」も(本法9条)ほとんど無限定であり、その内容は内閣総理大臣に委ねられている。
 また、「注視区域」や「特別注視区域」の指定の対象となる区域には、内容が政令に委任された「生活関連施設」(本法2条2項3号)や「有人国境離島地域を構成する離島」(本法2条3項2号)が入っており、極めて広範囲の地域を指定することが可能である。すなわち、「生活関連施設」としては発電所などのライフライン関連施設、空港や駅といった交通インフラ施設が含まれるおそれがあり、「有人国境離島地域を構成する離島」には佐渡島や対馬、沖縄の全ての有人島といった多数の離島が含まれる。沖縄の基地周辺はもちろんのこと、全国各地の様々な地域での市民監視が可能とされているのである。
 このような曖昧な要件で、広範囲の刑罰による威嚇を伴う行政処分を認める本法は、具体的にどのような行為が対象となるかという事前の判断が困難であり、刑罰法規としての明確性を欠くため、憲法31条に反している。

4 憲法の許容する委任の限度を超える
 「重要施設」のうちの「生活関連施設」(本法2条2項3号)の範囲や、地方公共団体の長等に提供を求めることができる情報の範囲(本法7条)について、本法は政令に委ねられている。
 基本的人権を侵害するおそれのある命令等の範囲を画する規定について、このように政令へ過度に広汎な委任をすることは許されず、憲法の許容する委任の限度を超えて違憲である。

5 本法成立に断固抗議し、廃止を求める
 以上のように、本法は憲法上の問題を多数含んだ違憲の立法である。
 当部会は、憲法を擁護し、平和と民主主義および基本的人権をまもることを目的とする法律家団体として、本法の成立に断固抗議して廃止を求めるとともに、本法の発動を許さず廃止に向けた取り組みを行っていくことをここに宣言する。
2021年6月27日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 2 回  定  時 総 会
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