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改憲手続法の改定に厳重に抗議するとともに、今後、国民投票の
有料広告規制等の改憲手続法の抜本的改定なく、
国会で改憲審議や国民投票の発議を進めないよう求める決議
1 事実経過
 2021年6月11日、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(以下、「本改定案」という)が成立し、日本国憲法の改正手続きに関する法律(以下、「改憲手続法」という)について、公職選挙法の改定(2016年)と同内容の7項目(投票人名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴。以下、「本7項目」という)の改定(以下、「本改定」という)が行われた。
 本改定は、自民党の4項目の改憲案による日本国憲法の改憲の目論見の一環であり、また、本7項目は、第2項以下で述べる通り、投票環境を悪化させるなどの問題点があり、当部会は本改定に厳重に抗議する。

2 本改定は、自民党の4項目の改憲案による日本国憲法の改憲を目指す動きの一環であること
 そもそも、改憲手続法について本改定案(与野党による修正がなされる前のもの)は、2018年6月に国会に提出された。
 その前年である2017年5月には、当時の安倍総理大臣が、2020年までに改憲を成し遂げると宣言し、2018年3月に自民党は4項目の改憲案(自衛隊と自衛の措置の明記、緊急事態措置、参議院合区解消、教育)を取りまとめた。
 また、2021年5月3日、菅総理大臣は、「自民党は憲法審査会で活発に議論を行っていただくため、憲法改正のたたき台を取りまとめている」としつつ、本改定案について、「憲法改正議論の最初の一歩として成立を目指さなければならない」と述べている。
 このように、本改定案は、自民党の4項目の改憲案による日本国憲法の改憲を目指す動きの一環であり、政府・与党は上記4項目の改憲のために本改定を目指していたのである。

3 本7項目の問題点
 また、本改定案は、公職選挙法の改定内容と同様の内容の改定を改憲手続法でも行うというものであるが、議員を選ぶ選挙における手続と、日本国憲法という国家の最も基本となる法の改定手続の内容は、必ずしも一致している必要はなく、むしろ、後者の方がより厳密に、投票の権利を確保、拡充するべきものである。
 本7項目の中には、繰延投票の告示期日の短縮や期日前投票の弾力的運用など、投票環境を後退させるものが含まれており、このような改定は許されない。洋上投票制度や在外投票制度では、本7項目の改定により、投票機会の向上は図られるが、この改定によっても投票できない国民が存在し続けることになり、改定の内容としては不十分である。
 改憲手続きにおいて、投票できない国民が存在したり、投票の機会の確保が不十分であれば、国民投票の正統性に疑問が生じるのであり、本改定案は憲法違反の疑いもある。

4 改憲手続法自体の問題点
 改憲手続法は、公務員・教育者に対する運動規制の在り方、テレビ・ラジオ・新聞の有料意見広告が無制限であること、発議後国民投票までの期間が短いこと、最低投票率が設定されていないこと、運動主体や費用の制限がないことなど、国民投票の公正を担保し、国民の意思が正しく投票結果に反映されるための措置が考慮されていない。
 このような問題を含む改憲手続法のもとで国民投票を行うことは、憲法96条に反して許されない。
 本改定の附則でも、「国は、この法律の施行後三年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」として、国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限、国民投票運動等の資金に係る規制、国民投票に関するインターネット等の適正な利用の確保を図るための方策などを掲げている。
 したがって、今後、これらの点を含め、改憲手続法を改定し、国民投票の公正を担保することが不可欠である。

5 結論
 本改定は、改憲手続法の上記問題点を放置したまま、改憲を行うために拙速に進められ、かつ、投票の機会の確保は十分に達成されず、むしろ、投票環境は悪化するものであり、到底許されない。当部会は、本改定に対し、厳重に抗議を行う。
 さらに、上記の通り、現在の改憲手続法は、国民投票の公正が担保されないものであり、今後、改憲手続法の国民投票制度について十分に審議が行われ、改憲手続法の改定が行われなければ、憲法改正案に係る審議はもちろん、国民投票の発議は許されてはならない。
 よって、当部会は、改憲手続法の国民投票制度を抜本的に改正し、国民の意思が正しく国民投票の結果に反映されるよう有料広告の制限等の必要な改定がなされるまで、憲法改正案の審議や国民投票の発議を進めないよう求めるものである。
2021年6月27日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 2 回  定  時 総 会
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