律家会弁護士学者合同部会
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アピール
私たちは、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会の開催と
公選法並びの改憲手続法改正案の採決に反対します
2021年1月18日
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
改憲問題対策法律家6団体連絡会
 憲法9条などの改憲を目指し、戦争法など数々の違憲立法を強行採決により成立させてきた安倍前首相は、辞任表明後もなお「改憲手続法を今国会で成立させる」と表明し、後継の菅政権も、「安倍政治の継承」を謳い、憲法改正に取り組むことを表明しました。これを受けて、衛藤征士郎自民党憲法改正推進本部長は、9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設など自民党4項目改憲案をもとに改憲原案に仕上げるとして、憲法改正原案起草委員会を立ち上げて活動を開始しました。そのような中で、昨年11月26日に開催された衆議院憲法審査会では、与党ら提出のいわゆる公選法並びの7項目の改憲手続法改正案(以下「7項目改正法案」あるいは単に「改正法案」といいます。)の審議が開始され、採否は持ち越されました。
 しかし、新型コロナ感染症の急激な感染拡大の中で、今、国会が全力を集中すべきは、医療崩壊を食い止め、市民の命を守り、生活の糧を得ることが困難となった多くの市民に対する補償や救済策を講じ、PCR検査の拡大など新型コロナ感染症の感染拡大を止める有効な対策を実行することであり、世論の大多数が望んでいない改憲の手続きについての議論ではありません。
 総がかり行動実行委員会と改憲問題対策法律家6団体連絡会は、以上の理由から、通常国会において、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会を開催すること自体に反対であり、仮に、開催するとしても7項目改正案の抜本的な見直しと改憲手続法の本質的な欠陥の是正を抜きに採決することには、以下に述べる理由により、強く反対します。

第1 憲法改正の投票を通常の選挙と同列に論じること自体誤りであること
1 7項目改正法案は、2016年に改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰り延べ投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて(並べて)改正する法案です。与党議員らは、「投票環境を向上させる」ものであり野党にも異論はないはず、提出からすでに7国会を経ている以上、直ちに成立させるべきとしています。

2 しかし、7項目改正法案の審議は、昨年11月26日の憲法審査会で始まったばかりであり、中身の検討は全くなされていません。法案提出者は、投票環境を改善するもので異論はないはずだとしていますが、たとえば期日前投票時間の2時間の短縮が可能となっていたり、繰り延べ投票期日の告示期限が5日前から2日前までに短縮されているなど、投票環境を後退させるものも含まれています。通常の選挙では仮に許されるとしても、憲法96条の憲法改正国民投票において、国民の投票環境を後退させることは許されません。国の基本である憲法を改正するか否かの国民投票の在り方がどうあるべきかは、それ自体、憲法審査会で慎重かつ十分な議論が必要です。

第2 7項目改正法案は、改憲手続法の根本的な問題が未解決の欠陥法案であること
 改憲手続法については、2007年5月の成立時において参議院で18項目にわたる附帯決議がなされ、2014年6月の一部改正の際にも衆議院憲法審査会で7項目、参議院憲法審査会で20項目もの附帯決議がなされており、日本弁護士連合会その他学者などからも欠陥の見直しを強く求められています。にも関わらず、これらの本質的な問題の解決が、13年以上も放置され続けています。とりわけ、(@)ラジオ・テレビ、インターネットの有料広告規制の問題や、ビッグデータの利用の規制の問題は、改憲手続法改正の議論において、避けては通れない重大な問題です。また、(A)運動の主体の問題もきわめて重要です。現在は、公務員・教育者に対する規制を除き(それ自体見直しの議論が必要です。)運動主体に制限はありません。しかし、企業(外国企業を含む)や外国政府などが、費用の規制もなく完全に自由に国民投票運動ができるとする法制は、抜本的な見直しが不可欠です。 
 7項目改正法案は、以上述べたような−「憲法改正をカネで買う」危険についてなどの問題が、全く考慮されていない欠陥改正法案です。これらの本質的な議論と制度の見直しを抜きに、欠陥改正法案を急ぎ成立させる必要は全くありません。
 
第3 7項目改正法案は、自民党の掲げる4項目改憲への道を開く道具であること
 もっとも、与党や維新らの改憲派が7項目改正法案の成立を急ぐ理由はあります。それは、自民党が現在準備中の4項目改憲案を憲法審査会に提示するために、7項目改正法案を成立させる必要があるからです。7項目の改正案が成立すれば、次は憲法改正原案の提示に進む目論見であることは明らかです。 
 そもそも、7項目改正法案は、安倍前首相の掲げた改憲を強行するための「道具」として生み出されたものです。2017年5月に、安倍首相(当時)が「2020年までに改憲を成し遂げる」と宣言し、2018年3月に自民党4項目改憲案の素案を取りまとめ、同年6月に、急遽間に合わせるように提出されたのが、この改憲手続法の7項目改正案です。自民党の4項目改憲案の狙いは憲法9条の改憲にあります。戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条2項を空文化し、「必要な自衛の措置」の名目で、無制限の集団的自衛権の行使を憲法上可能にし、自衛隊を通常の「軍隊」・「国防軍」にしようとするものに他ならず、「戦争をしない国」という我が国のあり方を根底から変える危険な改憲案であって、絶対に許してはなりません。欠陥改正法案法を成立させることは、この自民党改憲案が憲法審査会に提示され改憲発議への道を開くことに直結します。

第4 市民は、憲法改正議論など望んでいないこと
 市民が、憲法改正を必要とは考えていないことは、一昨年からのいずれの各種世論調査からも明らかです。新型コロナ感染症の拡大で苦しむ多くの人々の命も健康も生活も蔑ろにして、国会も開かずに自助を迫るだけの無能無策の限りを尽くす政府に対して、市民は心底怒りを覚えています。
 憲法改正の議論は、市民のなかから憲法を改正すべしという世論が大きく高まり、コンセンサスが形成される中で初めて可能となるのであり、市民の意思を無視して憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う国会議員や首相が主導することは許されません。そして、今、憲法改正論議を進めることなど市民が全く望んでいないことは明らかです。政府と国会が、何をおいても全力で取り組むべきことは、新型コロナ対策であり、市民の命と生活を守る施策であり、安倍前首相の桜を見る会関連の犯罪嫌疑などで地に堕ちた政治への信頼を取り戻し、立憲主義と民主主義の本道に立ち返るための努力です。
以上
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