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安倍政権に対し、新型コロナウイルス関連予算を、国民生活や
事業者の支援のために適切に使い、かつ、その使途について
説明責任を果たすことを求める決議
1 緊急事態宣言について
 安倍政権は、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のためとして、新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項の規定に基づき、2020年4月7日から、緊急事態宣言を発出した。当初は、首都圏等の一部都府県での発出であったが、4月16日からは全都道府県に拡大された。
 緊急事態宣言に伴い、政府は、不要不急の外出を避けることや、事業者には出勤者の4割減少やテレワークなどの活用により接触の機会を減らすこと、飲食店やイベント等の営業自粛を求めた。

2 国民への重大な影響
 営業自粛や外出自粛要請のため、多数の業種で営業を中止し、もしくは営業したとしても客足がなくなり、それに伴い、従業員を休業させるなどの対応をした事業者も多数に上っていた。これにより、事業者(特に中小事業者)や国民には収入が減少するなどの重大な影響が発生しており、家賃が払えないという生活者の声を、私たちは日ごろの相談や電話相談会などを通じて聞いている。

3 政府には適切に予算を使い、国民や事業者を支援するという姿勢が欠けていること
 憲法第29条3項は、損失補償について規定しており、この背景には、個人の尊重を定めた憲法第13条がある。政府により外出自粛、営業自粛の要請がなされているのであるから、事業者、国民に生じた損害について、損失補償をすることが検討されるべきであり、野党からも休業要請とともに補償を行うべきとの指摘がなされた。しかし、政府は早々に、「諸外国の例を見ても事業者に対する休業補償をやっている例は見当たらない」(西村経済再生大臣、2020年4月13日参議院決算委員会)などとして、補償をしない方針を打ち出し、売り上げが減少した中小事業者に対する持続化給付金や雇用調整助成金の拡充などの施策に止めた。
 実施する施策についても、次に述べる通り、政府は、国民の生活の支援や事業者への支援を積極的に行う姿勢に欠けている。
 住民基本台帳に記録されている者一人当たり10万円の給付を行う特別定額給付金の制度についても、当初は住民税の非課税世帯等の一部の対象者に、一世帯30万円の限度でしか支給がなされないものであったが、国民や野党の批判により一人あたり10万円という制度に変更された。
 また、政府は、4月7日、布製マスク(いわゆるアベノマスク)を一住所当たり2枚ずつ配布することを閣議決定したが、この製造、配布にかかる費用は466億円に上ると説明された(のちに契約金額の総額が260億円であることが発表された)。しかし、感染対策における布製マスクの効果に疑問があることに加え、アベノマスクは、虫の混入や、汚れなど、その品質に問題があるものが多数見つかり、回収して検品する等を行った結果、配布は遅れに遅れ、緊急事態宣言中には完了せず、その税金の使い道の不適正さに批判が集中した。さらに、アベノマスクの製造は、随意契約で受注者が決められ、その契約プロセスも不透明であったにもかかわらず、政府は当初、契約金額や契約の相手方も明らかにしないという態度であり、説明責任を果たす意思を有していない。
 持続化給付金の支給事業についても、経済産業省からサービスデザイン推進協議会が769億円で受注したものの、同協議会は749億円で電通に再委託し、さらに、電通は関連会社に645.1億円で再委託していたことが判明した。
 同協議会が入札により受注することになった経緯も不透明であり、さらに、経済産業省は再委託の許可をしていなかったこと等が判明し、経済産業省の規則に反して再委託がなされていたものであった。この事業については、経済産業省と電通、政府・自民党と電通との癒着構造が指摘されている。
 このように、安倍政権は、国民の予算を、新型コロナウイルスの影響に苦しむ中小事業者や国民に適切に使う意思を欠き、むしろ、癒着構造の中で、特定の企業や団体を儲けさせるために予算を使っているという疑惑すら存在する。
 さらに、このような疑惑があるにもかかわらず、安倍政権は、2020年度第2次補正予算案(総額約32兆円)において、10兆円もの予備費を計上し、批判が集中した。この補正予算は6月12日に可決成立したが、これは、政府に使途を白紙委任したわけではない。政府は適切に予算を使用し、閉会中審査も含めて、国会内外で、誠実に説明する必要がある。

4 結論
 新型コロナウイルスによる国民生活への影響は、まさに未曾有のものであり、当部会は、安倍政権に対し、憲法第13条の個人の尊重の精神に則り、適切に予算を用いて、国民生活の支援や事業者への支援を積極的に行うことを求める。
 また、政府が、この機に乗じて、特定の事業者の利益を図ることなど許されるはずはない。当部会は、安倍政権に対し、新型コロナウイルスにかかる予算を適切に使い、かつ、その使途について説明責任を果たすことを求めるものである。
2020年6月28日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
 第 51 回 定 時 総 会
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