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憲法の定める財政民主主義を破壊する「10兆円予備費」の大幅減額を求める
法律家団体緊急アピール
2020年6月10日
 改憲問題対策法律家6団体連絡会                                
社会文化法律センター 共同代表理事 宮 里 邦 雄
自 由 法 曹 団 団  長 吉 田 健 一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議  長 北 村  栄
日本国際法律家協会 会  長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会 会  長 佐々木 猛也
日本民主法律家協会 理 事 長 右 崎 正 博
 安倍政権は、5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため2020年度の第2次補正予算案を閣議決定しました。一般会計の追加の歳出が総額31兆9114億円と、補正予算としては過去最大のものです。事態の深刻さに見合わない第1次補正予算への国民の批判の高まりと野党の国会論戦によって、第2次補正予算案では、医療、雇用、中小企業などへの支援策が拡充されました。これは、国民世論の力が政治を動かした成果です。しかし同時に、約3分の1にあたる10兆円を予備費として計上しています。ここには、憲法にもとづく財政運営に照らして、重大な問題があります。

 日本国憲法は、政府に強い財政権限を認め議会権限を厳しく制限していた明治憲法の反省の上に立って、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」(83条)と財政国会中心主義の原則を定めています。その根底には、そもそも国の財政権限は主権者国民の負託を受けたものという財政民主主義の思想があります。国会の予算議決権(86条)や予備費制度(87条)も、この原則を踏まえて運営されねばなりません。
 財政民主主義の下では、本予算、補正予算とも目的に従って歳出の費目(項や目)を特定し、国会による事前の審議に基づいて決定されます(予算事前議決の原則)。また「項」の目的外使用の禁止(財政法32条)、「項」間の移用や「目」間の流用についての制限(同法33条)もあります(予算限定性の原則)。
 予備費は、「予見し難い予算の不足に充てるため」に設けて、「内閣の責任でこれを支出することができる」(憲法87条)とされており、国会の議決に基づくとはいえ、費目と予算額を定めて国会の事前の審議にかける予算原則の例外となる以上、それにふさわしい限定的な利用が求められます。

 当初予算の10分の1にもなる巨額の10兆円を予備費として政府に執行を「白紙委任」することは、かつて明治憲法70条が規定していた「緊急財政処分」の復活にも匹敵するものであり、日本国憲法の財政民主主義をくつがえす実質的な改憲に等しいものです。
 また、現在問題となっている「持続化給付金」や「Go Toキャンペーン事業」などの事務委託のような事例に対しても、国会の統制がかからなくなってしまいます。
 コロナ禍に苦しむ人々の生活と権利に関わる重要な予算は、人々の声や要求を国会がしっかりと受け止め、必要なところに確実に配分すること、すなわち「可視化」された形で運営されることが財政民主主義の要請です。逆に10兆円予備費は、早々に国会を閉じ、内閣の判断でいかようにもなる臨時国会の召集まで国会と国民を遠ざけた「密室での財政運営」をもたらします。このような財政運営は断じて許されません。予備費を適切な規模に減らして、次なる予算措置は、国民に対して開かれた第3次補正で行うべきです。
 
 以上の観点より、私たち改憲問題対策法律家6団体は、内閣及び国会に対し、以下のとおり要求します。
 内閣は、憲法を遵守し、10兆円の予備費を大幅に減額し透明性のある予算案の再提出を行い、透明かつ公正な予算の編成及び執行を行うこと。
 衆参両議院は、第2次補正予算が、憲法の財政民主主義の原則に基づき、かつコロナ禍に苦しむ人々の生活と権利を真に守るものとなるよう充分な審議を尽くすために、国会の会期を延長し、予備費を大幅に減額することをはじめとして必要な予算案の修正を施すこと。
 以上を要求し、緊急アピールとします。
 以上
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