|
|
|
障害者雇用数の「水増し」問題の原因究明と再発防止に努め、
障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき、
適法な障害者雇用の実現を求める声明 |
1 2018年8月、中央省庁が、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、「障害者雇用促進法」という)に基づき雇用するべき障害者の人数について、「水増し」をしていたことが判明した。
その後の調査で、地方自治体、立法機関、裁判所でも同様の「水増し」が行われていたことが判明した(以下、国の行政機関、地方自治体、立法機関、裁判所を「国及び地方公共団体の機関等」という)。
障害者雇用促進法第38条は、国及び地方公共団体の任命権者に対し、当該機関に勤務する「対象障害者」である職員の数が、法定雇用率(2017年6月1日時点で2.3%)以上の人数となるよう対象障害者の採用に関する計画の作成を義務付け、障害者の雇用の確保を求めている。
そして、「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者をいうが、いずれも、原則として、障害者手帳の交付(身体障害者及び精神障害者)や精神保健福祉センター等による判定(知的障害者)がなされている者である。
国及び地方公共団体の機関等は、障害者の任命に際し、障害者手帳や精神保健福祉センター等による判定がなされているかを確認せず、その結果、対象障害者ではない者を対象障害者であるとして任命し、法定雇用率を達成しているとしていた(国の行政機関で、雇用障害者数は6867.5人、障害者の実雇用率は2.49%)。
しかし、実際の対象障害者人数は3407.5人、障害者の実雇用率は1.19%であり、法定雇用率をはるかに下回る状況であった(重度以外の障害者の短時間労働者は0.5人と計算されている)。
2 障害者雇用促進法に反して、障害者の雇用数の「水増し」をしていたことは、国及び地方公共団体の機関等において障害者雇用を実現するために真摯に努力をするという姿勢が欠けていたものと評価せざるを得ない。
特に、法の番人たる裁判所が、組織として、虚偽の報告をした事実は看過し得ず、司法への信頼を傷つける行為であって、原因究明は言うまでもなく、責任者の処分を含む再発防止策を講じられてしかるべきである。
障害者雇用促進法は、障害者雇用の促進、雇用の分野における障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することを目指すものであり、その目的を達成するためにも、国及び地方公共団体の機関等が法定雇用率を達成することは不可欠である。
当部会は、国及び地方公共団体の機関等に対し、上記問題の原因を究明し、その結果を公表し、再発防止を図りつつ、速やかに障害者雇用促進法に基づく法定雇用率以上の障害者雇用を実現することを求める。 |
|
2018年10月29日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長 北 村 栄 |
|