|
|
|
森友学園公文書改ざん問題に関する緊急声明 |
1 2016年6月、財務省は学校法人森友学園(大阪市)に対して、同学園が計画していた小学校建設用地として大阪府豊中市の国有地を売却した。その際、同用地の地中深くにある大量のゴミの撤去が必要との理由から、売却価格を鑑定価格から約8億1900万円値引きした1億3400万円とした。
2017年の通常国会において、野党は上記の値引きに関する安倍晋三首相や同校の名誉校長(当時)であった安倍首相の妻昭恵氏らの関与を追及した。これに対し、財務省は「適正に算定した」と主張し、国会に国有地売却に関する決裁文書を提出した。
ところが、2018年3月12日、財務省は、森友問題が表面化した2017年2月以降、衆参両院の委員会と会計検査院に対して提出した国有地売却などに関する上記決裁文書について、14の文書で約300件の「書き換え」があったことを認め、「書き換え」前の記述内容を示した。
これら文書のうち一部は国会に提出された資料であったことから、国会提出資料について事前に改ざんが行なわれたことになる。
2018年3月27日、改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長に対して証人喚問が行なわれた。しかし、改ざんの経緯、理由、改ざん前の文章に記載された事実関係など重要な事項については、「刑事責任を問われるおそれがある」との理由で佐川氏は証言を拒否し、真相はほとんど究明されなかった。
2 憲法第62条は国政調査権を規定しており、国会が行政に対して、必要な調査を行なうことを規定している。また、国会法104条は「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない」と規定している。
これらの規定の目的は、三権分立のもと、国民の代表者で構成された国会が、行政に対して必要な調査を行なうことができることにより、国会に行政に対する必要な監督権限を与えた点にある。
財務省が文書を改ざんし、さらに国会に対して改ざんされた文書を提出したことは、国民の代表者で構成され、国権の最高機関である国会(憲法41条)の監督機能をないがしろにするものであり、憲法が規定する三権分立に反する行為である。
3 また、公文書管理法第1条は「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」と規定している。
この規定の目的は、国政に関する活動についての記録を適正に保存することにより、国政についての情報を正確に国民に伝達し、これにより国民が適正な政治的判断を行なうことを可能として、憲法で規定された国民主権の実現を図る点にある。
財務省が文書を改ざんし、さらに改ざんされた文書を国会に提出したことは、国民共有の財産である公文書をないがしろにし、さらには国政について国民に対し虚偽の情報を伝えるものであって、国民主権を侵害し民主主義の根底を奪うなど憲法に違反する行為である。
4 さらに、憲法は知る権利(憲法21条)を保障している。知る権利とは、国政についての情報を国民が取得できる権利である。知る権利が保障される理由は、国民が国政についての正確な情報や知識を取得することにより、国民の政治的判断力を高め、もって国民主権を実現することにある。
財務省が文書を改ざんし、さらに改ざんされた文書を国会に提出したことは、財務省が国民の財産である国有地の売却に関して、虚偽の事実を国民に提供したことを意味し、国民の知る権利を侵害するものである。
5 上記のとおり、財務省が森友学園への国有地売却に関する決済済みの文書について改ざんをし、さらに当該改ざん文書を国会に提出した行為は、憲法の規定する三権分立、国民主権、知る権利を侵害するものであって、憲法保障と人権擁護のために設立され活動している青年法律家協会弁護士学者合同部会は、これを断じて許すことはできない。
当部会は、本件の真相究明と再発防止を図るため、政府および国会に対して以下のとおり求める。
@ 政府は、今回の文書改ざんについての経緯、関与者、原因等を国民に対して具体的に明らかにした上で、関与者、責任者、監督者については、厳正なる処分を行なうこと
A その前提として、国会は、本件改ざんの真相究明のため、安倍昭恵氏、佐川氏の前任の理財局長であった迫田英典氏、安倍昭恵氏付き秘書官であった谷査恵子氏らの証人喚問を行うこと
B 政府は、憲法の規定する三権分立、国民主権、知る権利の内容を踏まえて、公文書の管理については公文書管理法第1条の趣旨にのっとり、今後、厳格かつ適正に行うこと |
|
2018年4月19日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長 北 村 栄 |
|