律家会弁護士学者合同部会
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核兵器禁止条約の採択を歓迎するとともに、
日本政府に対し具体的な対策を講じるよう求める
1 核兵器禁止条約の先進性
 2017年7月7日、ニューヨークで開かれていた国連会議(核兵器の全面廃絶のために核兵器を禁止する条約交渉会議)にて、核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)が122カ国・地域の賛成多数により可決された。本条約は、核兵器の開発、実験、製造、備蓄、委譲、使用のみならず、核兵器を使用するとの威嚇までを禁ずるものであり、また「援助し、奨励しまたは勧誘すること」も禁止している(1条)。
 このように核兵器を全面的に違法化した本条約は、核兵器の完全な廃絶のために非常に有効であり、後述する核拡散防止条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons NPT)等の従来の枠組みから一歩も二歩も踏み込んだ内容となっている。
 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、核兵器廃絶のための重要な前進とみて、本条約の採択を心より歓迎する。

2 被爆者の果たした大きな役割
 この国連会議には世界各国の市民団体とともに日本からも多くの被爆者が参加し発言した。本条約の前文には「被爆者にもたらされた容認しがたい苦難と損害に留意する」とあり、被爆者が耐え難い犠牲となったことに思いが寄せられている。また、70年余にわたって世界に警告してきた被爆者の活動は、核兵器全面廃絶を推進するための「市民的良心の役割」を果たしたと大きく評価された。
 採択後に行われた40か国近くの政府代表発言では、歴史的な条約採択をたたえあうとともに、日本の広島・長崎の被爆者が核兵器の非人道性を不屈に訴えてきたことへの感謝が述べられた。

3 核兵器禁止条約に対する核保有国等の反応
 ところが、核保有国、実質的核保有国等の諸国は、本条約の交渉に参加しなかった。不参加だった国は、核保有国であるアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国、実質的核保有国であるインド・パキスタン・北朝鮮・イスラエル、そして米国の「核の傘」の下にあるとされる日本や韓国、その他NATO諸国である。
 核保有国は、核兵器を「管理」し、「不拡散」を目指すNPTによる安全保障を主張し、核兵器の「廃絶」まで踏み込もうとしない。その動機は、本条約採択を受けて発表された米・英・仏の共同声明に見られるような、「核抑止力」の重視にあろう。また、実質的核保有国も、「核抑止力」を重視しているとみられる。

4 日本政府の立場
 本来であれば唯一の戦争被爆国である日本は、本条約採択のためにリーダーシップをとるべきところ、逆に核兵器を保有している諸国と同様、本条約の交渉にすら不参加であった。条約採択をうけて、別所浩郎国連大使は「署名することはない」と言い、世界の失望と批判を招いている。
 日本政府の公式な立場は、岸田文雄外相(当時)の発言から要約すると以下のとおりとなる。
 すなわち、@国際的な安全保障においては「核抑止力」が重要である、Aまた、会議には、現実に核兵器国の出席がないことから、本条約は核兵器保有国と非保有国の対立を深める可能性がある、Bしたがって、日本政府は本条約に署名せず、NPT等従来の枠組みの中で核兵器の廃絶を目指す、というものである。
 このように、「核抑止力」重視という点では核兵器保有国の論調に追随し、特に保有国と非保有国の対立を深める可能性を指摘し、本条約をむしろ否定的な文脈で見るのが、日本政府の立場の特徴といえよう。

5 日本政府が果たすべき役割
 「核抑止力」による安全保障は、際限のない軍拡競争を誘発するとともに、ひとたび核兵器が用いられれば、非人道的な大量殺戮がもたらされ国際秩序も破壊されるなど、全世界的に取り返しのつかない惨禍が想定されるという点で、現実的なものではない。我が国の安全保障を真剣に考えるのであれば、近隣諸国との外交関係の悪化をまずは解決するべきである。アメリカの「核の傘」の下で徒に近隣諸国を刺激することは、安全保障上、むしろ悪影響を与えている。
 そして、我が国の被爆者が想像を絶する苦しい経験に基づいて、核兵器禁止条約に署名を求めており、日本政府はその声にしっかりと応えるべきである。
 本条約の採択に大きな役割を果たしたエレン・ホワイト議長(コスタリカ)は、核兵器を保有していない国々の参加からNPTが始まったことを踏まえ、「当初は核兵器保有国がNPTに加入することなど考えられなかった。しかし、世界が変われば、状況も変わるものです」と指摘したが、まさしく、被爆者や市民団体が核兵器禁止の大きな国際世論を作り上げることで、核兵器保有国が賛同していないという状況は変えることができる。
 当条約の調印は本年9月20日から始まる。唯一の戦争被爆国である我が国は、悲惨な戦争体験への痛切な反省から生まれた憲法前文、9条の理念を踏まえ、積極的な役割を果たすべきである。

6 核兵器廃絶に向けて
 当部会は、日本政府に対し、核兵器禁止条約に調印することはもちろん、核兵器保有国と非保有国の橋渡しの役割を担い、核兵器保有国が本条約の枠組みに参入するよう働きかけることを強く求める。
 そして、当部会に所属する会員も、被爆者や多くの市民とともに核兵器廃絶に向けた取り組みを今後も力強く進めてゆくことを決意する。
2017年9月2日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 2 回 常  任  委  員  会
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