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改憲問題対策法律家6団体連絡会 アピール
自衛隊の存在を9条に明記する安倍改憲提案に反対します
 安倍首相は、今年5月3日の憲法記念日に、「憲法9条1項2項をそのまま残し、自衛隊の存在を記述する」との改憲案を提唱し、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明しました。自民党は、これを受けて、今年中に党としての改憲案を憲法審査会に提起し、来年の通常国会中に発議しようとしています。7月2日の東京都議会議員選挙では、自民党は「歴史的大敗」という厳しい審判を受けました。にもかかわらず、首相と自民党は、この改憲の方針をなお諦めようとしていません。
 私たち、改憲問題対策法律家6団体連絡会は、自衛隊の存在を9条に明記するとした安倍改憲案に、下記のとおり、断固として反対するものです。

 そもそも、安倍首相の上記発言は、憲法99条によって憲法尊重擁護義務を負い、かつ73条1号により「法律の誠実な執行」の事務を担って、66条3項によって「行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う」内閣の首長としての立場(権限)と義務に違反します。

 さらに、2020年と期限を区切って改憲を提唱する背後には、秘密保護法、安保法制(戦争法)、共謀罪と同様の手口により、強引に手続を進め、最後は数の力で改憲発議を行おうとする魂胆が透けて見えます。これは、憲法が国家権力を縛る根本規範であるがゆえに最高法規とされていること(憲法98条1項)や、改憲の発議権を有する国会(両院の憲法審査会)と憲法制定権力を有する主権者国民(憲法96条、1条、前文)を無視する態度であり、立憲主義と国民主権原理に違反する行為です。

 「憲法9条1項2項をそのまま残し、自衛隊の存在を記述する」とする内容を見ても、憲法に明記されて合憲化される自衛隊は、少なくとも2015年制定の安保法制(戦争法)によって、集団的自衛権行使や他国軍への「後方支援」の権限を付与された自衛隊であり、「専守防衛の任務に徹する自衛隊」ではないことに注意が必要です。
 そればかりでなく、自衛隊の憲法上の明文化により、集団的自衛権の全面行使、緊急事態における国民の権利制限や国家権力の政府への集中、いわゆる軍法会議の設置などに対する歯止めがなくなる可能性があることも見過ごせません。
自民党の憲法改正推進本部は、「憲法9条の従来の政府見解を動かさない」などとしていますが、政府による憲法9条の解釈は、2014年7月1日の閣議決定による集団的自衛権の一部容認により既に大きく変更されています。安倍政権と与党は、砂川最高裁判決といわゆる1972年政府見解を根拠に持ち出して、黒を白と言いくるめるがごとく集団的自衛権の行使を認め、それでも「政府解釈は従来から一貫して変わらない」と強弁したことは記憶に新しいところです。

 2014年7月1日の閣議決定とそれに基づく安保法制(戦争法)により権限が拡大された自衛隊を憲法上明記すれば、違憲だった安保法制(戦争法)が合憲化されるだけではなく、『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。』と規定した憲法9条2項の「死文化」「空文化」をもたらします。「武力によらない平和」から「武力による平和」へと憲法の基本原理である平和主義は、正反対の内容へと変質します。いわゆる「加憲」であっても、それと矛盾・抵触する他の条文(9条1項、2項)は、その意味を失うか修正されるのであって、それは「後法は前法に優る」という法の一般原則からして明らかです。
 その意味で、今回の安倍首相の改憲案は、9条2項を削除して9条の2で国防軍の規定をおくとする「自民党2012年改憲案」と狙いは基本的に同じです。
 
 そのほか、安倍首相の「提案」を受けて自民党が検討するという改憲項目の中で、内閣に法律と同一の効力を有する政令制定権を与える緊急事態条項の新設は、国会の立法権を奪い、国民に深刻な人権侵害をもたらす危険があり、反対です。また、教育の無償化や選挙制度改革に、憲法改正は必要ではなく、法律や予算措置などによってこそより適切に対処できます。

 私たち改憲問題対策法律家6団体は、この間、安倍政権や自民党などが推し進めてきた改憲の動きに対し断固として反対し、これを阻止するための取り組みを進めてきました。本日も、高見勝利氏を講師に迎えて、学習講演会「私たちは、9条に自衛隊を明記する安倍首相の提案とどう向き合うべきか」を開催して理論を学びました。
 私たちは、改めて、安倍政権の反立憲主義・反民主主義的姿勢に強く抗議するとともに、今、安倍政権が推し進めようとしている「9条に自衛隊を明記する改憲案」をはじめとするあらゆる改憲の企みに反対する大きな国民世論を作るために、全力を挙げていくことをここに宣言します。
2017年7月13日
 改憲問題対策法律家6団体連絡会                                
社会文化法律センター 代表理事 宮 里 邦 雄
自 由 法 曹 団 団  長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議  長 北 村  栄
日本国際法律家協会 会  長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会 会  長 佐々木 猛也
日本民主法律家協会 理 事 長 右 崎 正 博
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