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排外主義と闘い、差別を根絶するための行動を決意する |
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人種・民族・国籍など特定のマイノリティとしての属性を理由として個人・団体を差別し攻撃する状況が、今もなお繰り返されている。こうした差別や攻撃は、向けられた個人の尊厳(憲法13条)を侵害するとともに、さらなる差別を生み出していく傾向にある。(また、こうした差別や攻撃は、被害者への傷害罪や名誉毀損罪といった刑法犯につながる恐れも深刻である。)
青年法律家協会弁護士学者合同部会の法律家は、名誉毀損罪や威力業務妨害罪に対する刑事告発、ヘイトハラスメントなどヘイト攻撃に対する損害賠償、ヘイトデモ禁止の仮処分の措置など法的な救済に取り組んできた。また、全国各地で差別抑止のための見守り活動やカウンター行動に連帯するなど反差別の運動にも参加してきた。さらに、2016年6月にはヘイトスピーチ解消法が施行されたが、こうした反差別のための法律づくりや、地方自治体での差別防止のための条例(例えば大阪市条例など)の策定にも尽力してきた。
差別を許さないと決意し、具体的な行動を起こした人々との連帯によって、反差別の流れをたしかに作り上げ、差別思想や排外主義の盛り上がりを阻むという一定の成果を得てきた。
しかし、マイノリティに属する人々がさらされている差別被害の状況は、複雑多様化している。インターネット上でのヘイトスピーチは事実上野放しにされ、ヘイト攻撃の対象にされた個人は無数の差別的言動により深い傷を負っている。急増する匿名の書き込みには全く対応が追い付いていない。路上でのヘイトデモ件数は減少傾向とはいえ、カウンター行動を排斥して機動隊に守られながら実施される様子が動画サイトなどに数多くアップされている。インターネット上の差別的言動は、長期にわたって残存し、拡散の範囲が広く、それだけ被害が深刻である。マイノリティに属する人々は、日常的に差別的言動に遭遇して、日本社会からの孤立感や不信感を強め、「いつか本当に殺される」という現実的な恐怖を抱いている。しかし、こうした思いは、日本社会において一般に理解されているとは言い難い。
また、行政機関による差別も公然と行われている。朝鮮学校の生徒だけが就学支援金制度(いわゆる高校無償化制度)から除外され、これに呼応する形で各自治体(上記条例制定に至った大阪市も含まれる)による補助金支給停止と教育内容への介入事例が全国で相次いでいる。こうした「上からの差別」は、子どもの権利条約で保障された「民族教育を受ける権利」(28条、30条)を侵害するものであって、許されない。
日本社会が積極的に差別を主導する姿勢は、差別者にとって排外主義が容認されるものと思わせ、差別により引き起こされる犯罪(ヘイトクライム)をまねく恐れがある。
当部会は、差別のない共生社会を実現するため、差別が行われている現場での直接的な反対行動、ヘイトスピーチ解消法の改定(適法居住要件の撤廃など)、各地方自治体での条例作り、司法手続きを通じた人権救済、国際機関への働きかけなどあらゆる手段を通じて、日本社会で猛威を振るう排外主義と闘っていくことを宣言する。 |
2017年6月25日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 8 回 定 時 総 会 |
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