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少年法の適用年齢引き下げに反対する決議
 昨年12月20日、法務省の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」がとりまとめ報告書(以下、「報告書」という。)を発表した。これを踏まえて本年2月9日、法務大臣は少年法の適用年齢引き下げの是非について、法制審議会に調査審議を諮問した。当該議論は、昨年6月に選挙権年齢が引き下げられたことを発端としており、自民党の政務調査会は、平成27年9月に「国法上の統一性や分かりやすさといった観点から、少年法の適用対象年齢についても、満18歳未満に引き下げるのが適当であると考える。」等と意見提言している。しかしながら、少年法の適用年齢引き下げには、以下のとおり少年法の基本理念を無視した重大な問題があるので、当部会は断固として反対する。

1. 選挙権年齢引き下げに連動すべきではない
 法律の適用対象年齢は、制度趣旨や目的に照らして法律ごとに個別に検討されるべきものであることは言うまでもない。公職選挙法による選挙権年齢の引き下げ目的は、若者の政治参加を促進し、若者の意見を政治に反映させることである。かたや、少年法は、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的」としている(少年法第1項)。すなわち、少年法における「少年」は、健全育成のために保護処分を行い、または刑事事件において特別の措置を講ずるべき者であるべきである。このように異なる目的を持つ法律の適用年齢は、その制度趣旨に鑑み、個別に検討されるべきであって、「統一性」「わかりやすさ」と言う観点で連動されるべきものではない。

2. 18歳・19歳にも可塑性がある
 少年は、未だ人格の発展途上にあり、精神的にも未熟であって、可塑性が認められる存在である。それゆえ、少年法は、少年に対して刑罰による社会的責任の追及ではなく、保護処分による教育的処遇を行うこととしている。非行を犯した少年には虐待や不適切養育の成育歴が認められることが多いことは、少年事件を担当する付添人弁護士には周知の事実であり、適切な教育の場を与えられていなかった彼らにとって再非行・再犯防止のために必要なのは、刑罰ではなく「育ち直し」の機会なのである。そして、脳の発達が20歳代半ばまで続くという脳科学の知見からすれば、18歳、19歳は、まだまだ未成熟であり、発達途上にある可塑性が高い存在である。可塑性に鑑みれば、少年法の適用年齢は、引き上げられるべきとの意見も有力であり、年齢引き下げにより未成熟な18歳、19歳を対象外とすべきではない。

3. 適切な時期に処遇を受けることができなくなる
 平成27年度版犯罪白書によれば、少年による一般刑法犯は、窃盗罪、遺失物横領罪の順に構成比が高く、これら2罪だけで全体の73.8%を占めている。これらの2罪の中には万引きや置き引き等、刑事事件となれば起訴猶予や罰金、執行猶予となるような微罪事件が多数含まれているのである。すなわち、これら事件を起こした18歳、19歳に少年法が適用されれば、事件をきっかけに「非行の端緒」が認められ適切な処遇に繋がり得たにもかかわらず、刑事事件として処理されることで適切な時期に適切な処遇を受けられなくなる恐れがある。18歳・19歳の虞犯少年についても、少年法が適用されないことになれば、さらに非行・犯罪に進む恐れのある時期に、早期発見・早期処遇が施せなくなる恐れがある。

4. 一定の重大事件は既に原則逆送となっている
 少年法適用年齢引き下げ賛成の理由として、選挙権が与えられ、政治的にも責任ある行動がとれると国によって認定された18歳、19歳の者が重大な罪を犯した場合に、少年法が適用されて刑罰が減免されるなどということは許されることではないとの意見があがっている。しかしながら、既に少年法は2000年の改正により、一定の重大事件を犯した16歳以上の少年については原則逆送を定めているのであり(少年法20条2項)、引き下げの根拠とはならない。

5. 少年法は少年の更生・再非行防止に機能している
 「報告書」では、仮に少年法適用年齢が引き下げられた場合には刑事政策的懸念があるとして、少年法適用年齢が引き下げられた場合の代替措置を詳細に検討している。「報告書」が18歳、19歳のみならず20歳以上の若年層を含めた更生・再犯防止のための措置を検討している点は評価できる。しかしながら、若年層の更生・再犯防止措置と引き換えに、現行で十分に少年の更生・再非行防止に機能している少年法の適用年齢を引き下げる必要性はない。若年層の更生・再犯防止の措置は別途検討されるべきである。

6.
 以上のように、少年法の適用年齢引き下げは、少年法の理念をないがしろにするものであり、重大な問題点を孕んでいる。
 したがって、青年法律家協会弁護士学者合同部会は、少年法年齢引き下げに断固反対する。
以  上
2017年3月4日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 拡 大 常 任 委 員 会
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