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カジノ法に基づく実施法の整備に反対する決議
 2016年12月15日、統合型リゾート(IR)整備推進法(通称、カジノ推進法、以下、「カジノ法」という)が、世論の多数の反対にもかかわらず、自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
 カジノ法は、カジノを含む統合型リゾートの整備に関する基本法であり、2017年以降、運営業者の選定基準やギャンブル依存症対策などを定める実施法が整備される予定である。

 2014年8月に行われた厚労省の調査によると、日本はギャンブル依存症者が成人の4.8%(男性8.7%、女性1.8%、約536万人)にも上り、ギャンブル依存症が蔓延している国である。
 そして、日本のカジノ推進派による各種推計によると、IRカジノにおける外国人客の割合は多くて3割程度であり、日本人客が7割程度を占めることが想定されており、IRカジノが実現すれば、日本のギャンブル市場はさらに拡大することになる。
 しかも、2010年に行われたオーストラリア政府の推計によると、カジノ内のギャンブルであるスロットゲームやテーブルゲームのギャンブラー発症率のリスクは、競馬や宝くじに比べ2倍から13倍にも上ることが明らかになっている。
 日本でカジノが実現すれば、日本の住民がさらにギャンブル依存症の危険に晒されることになる。
 ギャンブル依存症者は、個人の自己責任ではなく、社会的に許容されたギャンブルの被害者であり、病気である。カジノを設置することによりギャンブル依存症者を増やす政策を採ることは、絶対に許されない。
 カジノ推進派は、カジノ法の成立により、ギャンブル依存症対策の予算が増えたことを強調するが、一方でギャンブル依存症を増やしながら、他方で依存症対策を取るなど本末転倒である。また、依存症対策で依存症になることを完全に否定できるわけではない。カジノ法を成立させずに、ギャンブル依存症対策を行えばよいだけである。

 アメリカで行われた調査(全米ゲーミング協会による2013年の調査)によると、アメリカのカジノ都市の暴力犯罪率、窃盗等犯罪率、総犯罪率は全米平均を大きく上回っていることが判明している。
 日本でも、ギャンブル依存症が犯罪や家族関係、友人関係等を破壊する要因になることは知られており、カジノが日本の住民に与える悪影響は明らかである。

 カジノ推進派は、カジノにより外国人観光客が増加することや地方経済が発展することなどを強調する。
 しかし、カジノはギャンブルのシステム上、必ずカジノ運営会社が利益を上げる仕組みになっている。またギャンブルにおけるある客の勝ちは、他の客の負けによるものであり、結局、客同士の財の移転が行われるだけである。
 仮にカジノにより外国人観光客が増え、経済効果があがるとしても、それは外国人観光客から財を収奪するという性質のものであり、日本の観光産業のあり方として不適切である。
 さらにIRカジノは当該IR内部で消費を完結するシステムを作ることにより、地元の消費が落ち込み、小売業や飲食業が淘汰されることが、アメリカのニューハンプシャー州のカジノの調査でも指摘されている。
 加えて、カジノの開設に当たっては、カジノ運営経験の豊富な外国資本の参入が予想されている。そうなれば、カジノで生じる利益の多くは、国外へ流出することになる。
 そのため、カジノが日本経済を発展させる経済効果があるとの見解には疑問がある。

 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、各会員の日々の債務整理事件などを通じて、ギャンブル依存症者と向きあい、ギャンブル依存症を社会問題として捉え、その撲滅のため活動をしてきた。
 カジノは経済効果に疑問が残るばかりか、明らかに、ギャンブル依存症や犯罪を増加させ、日本社会に悪影響を与えるものである。
 当部会は、カジノに反対する多くの国民と共同し、カジノの実現に反対する活動を行うことを表明するとともに、カジノ法に基づく実施法の整備に反対するものである。
2017年3月4日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 拡 大 常 任 委 員 会
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