律家会弁護士学者合同部会
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南スーダンPKO派遣の自衛隊の即時撤収を求め、稲田防衛大臣の辞任を求める決議
1 自衛隊は南スーダンから即時撤収すべきである
(1)南スーダンの情勢
 日本政府は、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき、2012 年から南スーダンに展開している「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」への陸上自衛隊を派遣しているが、2016年12月には「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の新任務を付与された第11次隊を派遣している。
 ところが、以下に見るとおり、南スーダンでは、大規模戦闘が頻発するなど治安は悪化の一途をたどっており、自衛隊派遣の前提であるPKO参加5原則が破たんしていることは明らかである。

(2)日報に記載された南スーダンの情勢
 南スーダンにおける情勢の悪化については、防衛省が公開した日報内の報告書に明確に記載されている。すなわち、2017年2月7日に防衛省が公開した日報によれば、2016年7月南スーダン首都ジュバでの大規模戦闘について、「TK(戦車)射撃を含む激しい銃撃戦」(11日日報)、「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」(中央即応集団司令部12日報告)等と記載されている。
 また、同報告書には「突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」、「宿営地外近傍施設(UNトンピン外)への直射火器の弾着を確認」(中央即応集団司令部12日報告)、「日本隊宿営地西側、UNトンピン外のトルコビル一帯において、SPLA(政府軍)戦車1両を含む銃撃戦が生起、日没まで戦闘継続」(同13日報告)等、駐屯している自衛隊部隊の間近で戦闘行為が行なわれている状況が記載されている。
 さらに、「ジュバでの衝突激化に伴うUN活動の停止」や「ジュバ市内での大量のIDP(国内避難民)の発生」(11日日報)など事態が悪化した場合についても予想している。

(3)JVCによる報告
 2017年2月21日、衆議院予算委員会における中央公聴会において意見陳述をした日本国際ボランティアセンター(JVC)の今井高樹氏は、自衛隊が活動する避難民保護施設の周辺地について「ジュバの中でも最も不安定な、何かしらの衝突が起こっても全く不思議ではない場所だ」と指摘した。そして、施設内に避難する元副大統領のマシャール氏の出身部族に対し、政府軍が襲撃を繰り返していると話し、「日本政府は『ジュバは落ち着いている』というが、(停戦合意の成立などを派遣の要件とした)PKO5原則は崩れている」と南スーダンの現状について意見を述べた。

(4)PKO参加5原則の破綻は明らか
 このような状況からすれば、もはや現在の南スーダンにおいて、「PKO参加5原則」にて要件とされている紛争当事者間の「停戦合意」が十分に保たれていないのは明らかである。
 このような南スーダンの状況の下で、自衛隊を同国に駐留させ続ければ、憲法第9条1項で禁じられた「武力行使」を行なう危険性が高いといえる。また、新任務の付与により自己保存型から任務遂行型に武器使用権限が拡大されていることからも、これまで以上に「武力行使」を行なう危険性が高まっている。
 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、すでに2016年12月に南スーダンからの自衛隊の即時撤収を求める決議を挙げたが、上記の報告等に鑑みれば、当時に比べてさらに治安の悪化が深刻化していると言わねばならず、撤収の緊急性はいっそう高まっていると言える。

2 稲田朋美防衛大臣は辞任すべきである
(1)組織的な情報隠しの疑い
 2016年9月30日、「平和新聞」編集長布施祐仁氏が防衛省に対し、2016年7月7日から同月12日までの活動日報について情報公開請求をした。しかし、防衛省は上記請求に対して、「廃棄した」ことを理由に2016年12月2日に不開示決定を行なった。
 ところが、2017年2月7日、防衛省は、上記日報について統合幕僚監部が保管していたことを明らかにした。国会における説明によれば、2016年12月2日の不開示決定後、稲田朋美防衛大臣は捜索を指示し、同年12月26日に「日報」の存在が明らかとなり、2017年1月27日にその旨同大臣に報告されたとのことである。
 これにより、「日報」を廃棄していたという政府の言明が虚偽であることが明らかになった。また、「日報」の存在は、1か月以上も防衛大臣に隠されたままであったことになる。
 また、文書を管理していた統合幕僚監部が、防衛大臣に対して文書廃棄という虚偽の報告をしていたとすれば、また、文書発見の報告の遅れが意図的な怠業だとすれば、これは自衛隊が首相や防衛大臣ら文民の統制に服するというシビリアンコントロールに違反する重大な事態である。

(2)不当なマスキング処理
 また、同年2月7日に一部開示された「日報」は、多数のマスキングが行なわれており、自衛隊の活動や南スーダンの状況について十分な情報が開示されていない。
 そもそも、上記「日報」は自衛隊の活動が憲法や法律に基づき適正に行なわれているかについて国会や国民が判断するための資料であって、憲法で保障された国民主権(憲法1条)や知る権利(憲法21条)にとって重要な情報が記載されたものである。
 このような防衛省によるマスキングの指示は、南スーダンの状況を国民の目に触れさせないように隠蔽しようとする姿勢にほかならない。

(3)言葉をもてあそぶ態度
 さらに、2017年2月14日の衆議院の予算委員会において、「日報」に記載された「戦闘」という言葉について、稲田防衛大臣は「武力衝突」と言い換えたうえで、「『戦闘』という表現は法的な意味での戦闘行為ではない」、「憲法9条上の問題になる言葉を使うべきではない」と詭弁を述べて居直る答弁をした。
 南スーダンの現状を直視せずに、憲法上問題があるという理由のみで「戦闘」という言葉の使用を避け「武力衝突」と言い換えるのは、憲法軽視、PKO参加5原則軽視も甚だしいと言わねばならない。
 前述したJVC今井氏も、「(南スーダンの)現地からみれば、みなさん自分の家族を亡くし、あるいは家を追われ、いまも避難生活を続けている。多くの方が亡くなった。国会でどう表現しようと現場で起きていることは変わらない」と訴え、稲田大臣の答弁は「言葉遊びのようなものだ」と強く批判している。

(4)稲田防衛大臣には憲法遵守の姿勢、管理能力が欠ける
 「日報」の存在をめぐる防衛省の対応や不当なマスキング、国会での憲法軽視の答弁などに照らせば、稲田防衛大臣には憲法遵守の姿勢および防衛省・自衛隊を管理する能力が欠けていることは明らかである。

3 結語 
 よって、当部会は、政府に対して、現在PKOに基づき南スーダンに派遣されている自衛隊を即時撤収するよう求めるとともに、稲田防衛大臣の辞任を強く求める。
2017年3月4日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 拡 大 常 任 委 員 会
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