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共謀罪(組織犯罪準備罪)の創設に反対する決議
 安倍政権は、2020年の東京オリンピック、パラリンピックのテロ対策を口実として、「組織犯罪準備罪」を創設する法案(組織的犯罪処罰法改正法案)を国会に提出することを検討している。

 報道されている組織犯罪準備罪は、「組織的犯罪集団(団体の共同の目的が、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められる罪又は特定犯罪を実行することにある団体)」の活動として、犯罪の遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかにより、当該犯罪の実行の準備行為(資金又は物品の取得)が行われたときに成立する。これによれば、600以上の犯罪につき計画のみで処罰が可能となる。

  これは、まぎれもなく、過去2003年から2005年にかけて国会に法案提出されたものの、世論の反対によりいずれも2009年までに3度にわたって廃案となった「共謀罪」を、名称を変えて提出したものに他ならない。これまでの共謀罪で使用されていた文言である「団体」、「共謀した者」を、それぞれ「組織的犯罪集団」、「計画した者」と言い換えたに過ぎない。

 そもそも、近代刑法は、刑罰の対象を、人の生命、身体、財産などの法益を侵害し、あるいはその危険性がある「行為」に限定し、内心のみでは法益侵害性がなく処罰しないという前提に立っている。

  日本国憲法19条も、「内心の自由」を保障しており、この近代刑法の原則は、日本国憲法でも妥当するものである。

 共謀罪(組織犯罪準備罪)は、「準備行為」という行為を処罰するように見える。しかし、政府の説明と思しき書面(「予備罪または準備罪と改正後の組織犯罪処罰法第6の2の『準備行為』との差異について」と題する書面)では、「準備行為については、予備罪の予備のようにそれ自体が一定の危険性を備えている必要性はなく、元々危険性のある組織的犯罪集団の活動として犯罪についての計画について、当該犯罪が現実に実行される危険性が高まった、すなわち当該犯罪の実行に向けた具体的な行為がなされたといえるものであれば足りる」とされている。 

  そのため、準備行為自体は法益侵害の危険性を要するものではないとされ、この「準備行為」は犯罪構成要件ではなく処罰条件に過ぎず、実質的には、「犯罪の計画」自体により犯罪が成立するものといえる。

  また、「組織的犯罪集団」という構成要件も、単なる共謀でも要件を満たしうるのであり、漠然かつ不明確で構成要件を限定する機能を果たすものではない。

 そして、「犯罪の計画」を罪とする共謀罪を捜査する際には、計画の話合いの内容を対象とする捜査が不可欠になる。話合いの内容を捜査するということは、捜査対象の大幅な拡大を意味する。

  また、その捜査のため、2016年に改定され要件が緩和された通信傍受が使われたり、同じく新設された司法取引が使われたりして、これらの悪法が相互に補完し合うことにより、国民の日常生活、日常の会話に捜査機関が介入する口実を与えるものである。

  これは、国民の人権に対する重大な侵害である。

 さらに、政府は、共謀罪が必要とされる理由として、「国連越境犯罪防止条約」締結のためと説明している。しかし、すでに日本には組織犯罪集団の関与する犯罪を未遂段階で処罰できる刑法制度が整備されており、むしろその濫用が危惧されるほどであって、共謀罪を必要とする立法事実は何ら存在しない。

 過去、第二次世界大戦時には、国家が国民生活に介入し、戦争をはじめとする政府の政策に反対する勢力を弾圧してきた。

  自衛隊の武器使用を拡大したり、集団的自衛権を行使可能としたりする、安倍政権の「戦争する国家」化政策と重ねてみれば、今回成立が目論まれている共謀罪は、今後、戦争などに反対する国民を弾圧するための手段となりうるものである。

  したがって、青年法律家協会弁護士学者合同部会は共謀罪の創設に反対し、国民と共同して成立阻止に向けて活動することを宣言する。
2016年12月 3日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 3 回  常 任 委 員 会
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