律家会弁護士学者合同部会
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給付型奨学金の創設・拡充、大学学費値下げなど、
教育を受ける権利の実質的保障を求める決議
 憲法第26条1項は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定している。
この趣旨は、能力はあるが就学が困難な者に対して、国が経済的援助を行うことにより、経済的な状況に関係なく誰もが教育の機会を受けることができることを保障した点にある。ところが日本社会では、以下に見るとおり、こうした教育を受ける権利が保障されているとはいえない。

 現在、日本の大学の授業料は、1年間で、国立で約53万円、私立で約83万円であり、世界的にみても高額なものとなっている。

その結果、高額な学費を支払うために奨学金制度、特に日本学生支援機構の奨学金制度を利用する学生が増加しており、利用者は大学生の51.3%にまで達している(2014年度学生生活調査)。

もっとも、日本学生支援機構の奨学金は貸与方式であって、その実態はローン(借金)と変わらない。日本において、給付方式の奨学金制度はごくわずかである。

非正規雇用の増加(2015年では全労働者のうち37.5%)や就職率の低迷にともない、大学卒業後も収入が低く安定していない者が増え、そのため、大学卒業後、奨学金の返済が困難な者が増加している。滞納者は約33万人(2014年)であり、奨学金の返済債務が原因で自己破産に追い込まれる者が約1万件とされている(2014年)。

ところが、日本学生支援機構は、返済の困難な者に対して、奨学金の返還することは自己責任であるとして返還率を上げるため回収強化を推進している。具体的には、支払いを滞納した者をブラックリストに登録し、その後、取立てを債権回収会社に委託して、支払督促を行なう手段を積極的に行なっているのである。

奨学金の返済が困難なものに対して、裁判所から支払督促を求められた件数が年間約8400件(2014年)、でありこの10年で約40倍となっている。

 学費が高額であって奨学金制度が不十分であるのは、日本の教育への公的支出が極端に少ない点に原因がある。国内総生産(GDP)に占める公的教育への支出の割合は3.5%、うち高等教育への支出が0.5%にとどまり、OECD32か国の加盟国の中で日本は最下位となっている(OECD全体では、公的教育への支出はGDP比4.7%、高等教育への支出は1.2%)。

これでは、能力や意欲があっても、経済的理由により大学等高等教育への進学が困難な者が増え、憲法第26条1項の保障する教育を受ける権利が実質的に侵害されかねない。

また、大学卒業後、奨学金の返済が負担となって生活が著しく困窮する者が増加し、憲法第25条の保障する生存権が脅かされる可能性も高い。

 従来、日本政府は、高等教育の無償化を規定した国際人権規約の社会権規約第13条2(C)の「特に無償教育の漸進的な導入により」の部分を留保して批准していたが、2012年に上記留保部分を撤回した。これにより、日本政府は高等教育の無償化を進めていく義務を負う(憲法98条2項)。

よって、青年法律家協会弁護士学者合同部会は、高等教育の無償化実現に向けた具体的な内容として、以下の措置をすみやかに採ることを求める。 

@ 政府は、教育への公的支出額を早期にOECD平均のGDP比4.7%まで引き上げ、さらにその拡大を図ること。

A 政府は、国公立大学への運営交付金、私立大学への私学助成を増額して、大学全体の学費の値下げを推進する政策をとること。

B 政府は、給付型の奨学金制度の創設を行ない、かつ拡充すること。

C 日本学生支援機構は、同機構に対する返済義務がある者の中で、経済的理由により返済が困難な者に対しては、猶予、減額、免除措置の拡充を行なうこと及びそのことを利用者に十分に告知すること。
2016年6月26日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 7 回 定 時 総 会 
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