律家会弁護士学者合同部会
Japan Young Lawyers Association Attorneys and Academics Section
〒160-0004 東京都新宿区四谷2-2-5小谷田ビル5階
TEL 03-5366-1131 FAX 03-5366-1141
お問い合わせ  リンク 
MENU
トップページ

青年法律家協会とは
    □弁護士学者合同部会

    □入会申込書

弁学合同部会の活動
    □決議/声明/意見書

    □委員会の活動

    □人権研究交流集会

イベント・学習会
のお知らせ
□イベントカレンダー

修習生のみなさんへ
□事務所説明会のお知らせ

法律家をめざす
みなさんへ

出版物のご案内

□機関紙「青年法律家」

リンク

報道・表現の自由を破壊する総務相らの発言に抗議する決議
 高市早苗総務相は衆院予算委員会において、放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性があるとした(本年2月8日)。また、安倍首相は「安倍政権こそ言論の自由を大切にしている」として高市総務相の発言を擁護し(2月10日)、さらに、政府は衆院予算委員会理事懇談会において、「政治的公平の解釈について」とする政府統一見解の中で、政治的公平の適合性について、番組全体を見て判断するとの従来の解釈に変更はないとしたものの、「番組全体は一つ一つの番組の集合体。一つの番組を見て全体を判断することは当然」とした(2月13日)。

 放送番組の編集に関して、放送法は4条1項において「政治的に公平であること」(2号)、「報道は事実をまげないですること」(3号)など4つの基本方針を定めている。そして、こうした放送法に違反した放送局に対し、総務相は電波の停止や放送免許の取り消しを命じることができるとされている(電波法76条1項、3項)。

 しかし、この4つの基本方針は、たとえ違反したとしても上記の行政処分ができる「法規範」ではなく、あくまで放送局自身が努力目標としてめざす「倫理規範」にとどまる。なぜなら、番組内容によって国が放送局を処分してしまうことが許されれば、報道機関に認められた「表現の自由」(憲法21条)が侵害されるとともに、国民の知る権利(同)をも侵されるからである。放送法も1条において「放送による表現の自由を確保すること」と定めていることからみても、放送法4条は倫理規範であると解することで、かろうじて違憲性を回避してきたのである。したがって、政府が放送法4条違反を理由に電波停止などを命じるとしたのは明らかに憲法に違反する。

 また、政府は、「政治的に公平」か否かの判断基準について変更を加えようとしている。従来の政府見解は、「政治的に公平」か否かは一つの番組ではなく一定期間の番組全体で判断すべきであって、意見の分かれる主張全てを機械的に同じ時間だけ取り上げなければならないとはしていなかった。今回、新しく政府統一見解として示された「一つの番組を見て全体を判断すること」は、何ら当然ではなく、むしろ従来の政府見解を否定し報道機関の報道の自由を著しく制約するものであると言わねばならない。

 従来の見解を無視してことさらに政府が電波停止を持ち出すのは、放送局に対する威嚇や恫喝以外の何ものでもなく、政権を批判する放送内容の制作・編集に対する強い萎縮効果を狙ってのものと言える。

 報道番組は放送法4条1項の大枠の中で個性を発揮してこそ魅力ある報道となり、言論空間も多様性を持った豊かなものとなるはずである。多様な角度から問題を掘り下げ取材し、全体像を示しながら問題点を浮き彫りにすることこそが「公平」な報道であって、単に個々の番組に量的な平等を求めることは真実を国民から遠ざけてしまう。

 また、民主政を機能させるためには政治的表現こそが最も厚く保障されるべきであり、そのために報道機関には権力を常に監視し批判する役割が強く求められる。

 総務相らの発言に見られる報道機関への威嚇、恫喝は、秘密保護法の制定や日本版NSCの施行などに見られるとおり、政府中枢に情報を集約する一方で、国民に必要な情報を提供せず、また国民にものを言わせないことによって戦争する国づくりを完成させようとする政策の一環と言える。

 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、高市総務相などをはじめとする政府の放送法をめぐる発言に抗議するとともに、放送メディアに対しても毅然と政府に対して抗議するよう求める。
2016年3月4日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 拡 大 常 任 委 員 会
 ページトップへ    前ページへ戻る

トップページ 青法協とは 弁学合同部会の活動 イベント・学習会 修習生のみなさんへ 法律家をめざすみなさんへ 出版物
(c)2012,Japan Young Lawyers Association Attorneys and Academics Section. All rights reserved.
掲載中の文章・写真およびデータ類の無断使用を一切禁じます。