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辺野古新基地建設中止を求める決議
 今、沖縄県名護市の辺野古では、圧倒的な沖縄の人々の声を無視して米軍の新基地が日本政府によって建設されようとしている。青年法律家協会弁護士学者合同部会は、辺野古への新基地建設を即時中止するよう強く求める。

 沖縄は太平洋戦争で住民を巻き込んだ唯一の地上戦が行われた地であり、本土防衛のための「捨て石」として約15万人が犠牲となった。少なくない沖縄県民は日本軍から殺害されている。

 戦後には米軍が「銃剣とブルドーザー」等によって土地を接収し、米軍基地を拡大してきた。1972年の本土復帰後も米軍基地が存続され、国土の0.6%しかない沖縄県に、今も在日米軍の約74%が集約されている。また、沖縄県の基地被害はすさまじく、強姦や殺人等の凶悪犯罪を含む米軍関係者の犯罪、戦闘機やヘリコプター等の事故被害、騒音被害・環境被害などが発生している。しかも、米軍関係者の犯罪や事故等が発生しても、日米地位協定等によって、日本は不十分な捜査しかできない。

 辺野古新基地建設はこうした基地被害をさらに拡大・固定化するものでもある上に、初めて沖縄県民に用地を差し出させるという点で県民に屈辱を強いるものである。

 沖縄県民は、辺野古新基地建設に対して、はっきり「NO」の意思表示を行っている。2014年1月の名護市長選挙では稲嶺進市長が再選され、同年9月の名護市議会議員選挙では辺野古新基地建設反対派が勝利し議会の多数派となった。同年11月に行われた沖縄県知事選挙では保守革新を超えた「オール沖縄」の立場で闘った翁長雄志氏が、辺野古新基地建設を容認する仲井真弘多氏に圧勝した。さらに、同年12月に行われた衆議院選挙では、沖縄の4選挙区全てで辺野古基地建設反対を掲げる「オール沖縄」の候補が勝利した。その後の世論調査でも圧倒的に反対の声が示されている。

 翁長知事は、2015年10月13日、こうした圧倒的な県民の支持のもと、2013年12月に仲井真知事が行った「公有水面埋立申請(辺野古沖)」の承認を取り消した。ところが、政府はこれを認めず、翌14日には沖縄防衛局は国土交通省に対して行政不服審査法に基づくとして不服審査請求と執行停止を申し立て、国交省は同月27日に執行停止を認めた。

 しかし、かかる不服審査制度は「国民の権利利益の救済」を目的としているものであるから、行政機関が申立てを行うことはそもそも認められず、手続きが違法であることは明白である。10月23日付けの行政法学者有志の声明でも、政府の手法は、「不公正であり、法治国家にもとるもの」と厳しく断罪されているところである。それでも、政府は、さらに11月17日、埋立て承認取消し処分を撤回する代執行に向けた訴訟を提起し、あくまでも新基地建設を強行する姿勢を崩していない。

 政府は基地建設を強行する理由として安全保障上の「抑止力」を持ち出す。しかし、抑止力という理由は詭弁でしかない。そのことは、民主党政権時代の森本敏防衛大臣が「軍事的には海兵隊は沖縄でなくてもいい」と明言したことからも明らかである。米国防省自体が、日本には「日本防衛のための基地は一つもない」としている。米軍基地は日本防衛のためのものではなく、あくまでも米国の戦争のための出撃拠点でしかない。そもそも、海兵隊は急襲部隊であり、防衛のための部隊ではないのである。

 辺野古新基地建設によって埋め立てられようとしている大浦湾は、沖縄でも規模の大きい良好な藻場があり、多くのサンゴが広がり、ジュゴンの生息も確認されている。辺野古・大浦湾の海は、絶滅危惧種262種を含む5300種以上の海洋生物の生息地「いのちの海」である。埋立て工事は、サンゴや藻場を破壊するとともに、ジュゴンをはじめとする多様な生物の生息を危うくするものとなる。

 辺野古新基地は安全保障上、全く必要のないものであり、また辺野古・大浦湾の豊かな環境を破壊するものでもある。そして、何よりも沖縄県民が新基地建設に対して一貫してNOの声をあげつづけ、日本政府の恫喝を含む建設強行の態度にも屈していない。こうした沖縄の声に呼応して、首都圏では「辺野古新基地建設に反対する若手有志の会」(NBFes)が立ち上げられ、当部会の会員の多くが参加し、集会や街頭宣伝を毎週のように繰り広げている。

 当部会は、政府に対して、不服審査請求・執行停止の申立て、代執行に向けた訴訟をいずれも直ちに取り下げるよう求めるとともに、辺野古新基地建設を即時中止するよう強く求める。
2015年12月5日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
 第 3 回 常 任 委 員 会
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