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立憲民主主義と日本国憲法の平和主義を蹂躙する
戦争法制の可決・成立に強く抗議する |
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自民・公明両党と次世代の党など3野党は、本年9月17日、参院特別委員会での強行「採決」に続き、同月19日に参院本会議でも強行採決を行い、戦争法制(安全保障関連法制)を可決・成立させた。憲法前文、9条に掲げられた平和の理念を根底から突き崩すとともに、立憲主義、民主主義をも踏みにじる戦争法制の可決・成立に対し、青年法律家協会弁護士学者合同部会は強く抗議する。
この戦争法制は、これまでも決議や声明で指摘してきたとおり、従来、政府が憲法上認められないとしてきた集団的自衛権の行使を可能とするとともに、自衛隊が米国等の他国軍隊とともに、地理的限定なく、有事平時を問わず緊密に「切れ目なく」協力して武力を行使することも解禁する内容となっている。これは、憲法第9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の平和主義を根底から覆すものである。
国会での審議を通じて、当初、戦争法制の必要性の根拠として示された「日本人を乗せた米艦船の防護」「ホルムズ海峡における機雷除去」がいずれも立法事実とはならないということが明らかにされた。また、合憲性の根拠とされた砂川事件最高裁判決や1972年政府見解の読み替えなども国会審議の中で論理矛盾が露呈するに至った。さらに、日本弁護士連合会や全国の52の単位会、全国のほとんどの憲法研究者や歴代内閣法制局長官、最高裁判所元長官らが戦争法制は違憲であると断じてきた。
したがって、政府与党は、こうした違憲立法であるとの指摘を聞き入れ、戦争法制を廃案にするために充実した討議を行うべきであった。しかし、政府与党はこうした声に耳を塞ぎ、議席数の力にものを言わせて、本年7月15日に衆院特別委員会で、同月16日には衆院本会議で続けて強行採決を行い、参院でも地方公聴会の審議内容の報告を行わないなど強硬な審理を続けた。9月17日に参院特別委員会で「採決」がなされたとされているが、実際には鴻池祥肇委員長による議題の宣告は確認できず、議事録も取れないほどの喧騒の中で、暴力的な「採決」なるものが強行されたにすぎず、採決は実際には不存在であった。これは、国民主権と議会制民主主義をないがしろにする異常な態度である。国会審議よりも今年4月の米国連邦議会でのアメリカとの約束を重視したということであれば、国民無視も甚だしいと言わねばならない。
また、これまで60年以上にわたって積み上げられてきた自衛権の解釈を一内閣の恣意的な判断によって変更し、これをもとに憲法の平和主義に真っ向から違反する戦争法制を成立させたことは、下位法による憲法の破壊であって、立憲主義を蹂躙するものである。
こうした政府与党の暴走に対して、「SEALDs」などの若者や「ママの会」をはじめとする女性と子どもたちなど、世代を超えた多くの国民が不安と怒りを持ち、戦争法制の撤回を求めて国会前をはじめ全国各地で連日、集会やデモを繰り広げた。とりわけ8月30日の国会前12万人デモ、全国100万人デモで発せられた声は政府与党を圧倒した。当部会の会員もこうしたデモに参加するとともに、警察の過剰警備に対して「見守り弁護」などを通じて市民の安全を図ってきた。
戦争法制は成立したが、戦争法制の発動を絶対に許さないという国民の声はますます盛んとなっている。憲法の定める平和主義の堅持を求めて設立された当部会は、戦争法制の可決・成立に対して強い怒りを込めてこれに抗議するとともに、これからも多くの国民と連帯して、この戦争法制を発動させず廃止するため全力を尽くすことを宣言する。
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2015年10月2日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長 原 和 良 |
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