律家会弁護士学者合同部会
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戦争法案の廃案を求める決議
1 はじめに
来る8月15日でアジア太平洋戦争の終結から70年を迎える。我が国は戦後、侵略戦争、植民地支配によって周辺諸国に多大な被害を与えたことの反省から、憲法前文・9条の平和主義に基づいて、政府による戦争を起こすことができない国を作り上げようと誓った。その後、「自衛隊」が創設されるに至ったが、以下に見るとおり「専守防衛」という歯止めがかけられてきた。まがりなりにも戦後70年間を通じ他国と一度も交戦していない実績は、国際的に広く認知され、平和国家として一定の評価を得るにまで至った。
ところが、昨年7月に安倍晋三内閣は、憲法解釈を捻じ曲げ集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、本年4月27日には自衛隊と米軍の役割分担を定めた防衛協力指針(ガイドライン)の改定に合意した。新ガイドラインは地理的制約を撤廃し地球規模で日米両国が軍事協力する内容である。
そして、政府与党は、今国会(第189回通常国会)に武力攻撃事態法、自衛隊法など10法を一括して「改正」する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」を提出した。これらいわゆる戦争法案(安保法案)の内容は以下に指摘するように、憲法9条及び従来の内閣が築いてきた憲法解釈に違反するとともに、戦争を抑止してきた法体系を根底から破壊し、我が国を戦前の「戦争する国」に回帰させるものである。このような憲法破壊を断じて許してはならない。

2 集団的自衛権行使は憲法に違反する
現行の自衛隊法は、「我が国に対する外部からの武力攻撃」が発生した場合のみ防衛出動を認める(現行自衛隊法76条1項)。ところが今回の「改正」法案は「我が国と密接な国」に対する外部からの武力攻撃も防衛出動の対象に含む。これにより我が国は何ら攻撃されていなくても、「我が国と密接な国」が攻撃を受ければ「防衛」名目で自衛隊が出動し、武力を行使することとなる。
また現行の武力攻撃事態法に代わる武力攻撃・存立危機事態法は、現行法が自衛権発動の要件を「我が国に対する外部からの武力攻撃」に限定していたところ(武力攻撃事態法2条1号)、「我が国と密接な国」への攻撃により「我が国の存立が脅かされる等の事態」が生じた場合(「存立危機事態」)にも武力行使を可能とする。
これらはいずれも集団的自衛権行使を前提とした法「改正」であり、恒久平和主義を謳う憲法前文の理念や「国際紛争を解決する手段として」の戦争、「武力の行使」、「武力による威嚇」を禁止する9条1項の趣旨を蔑ろにするものである。また、1972年政府見解(「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」)に表れているとおり、歴代自民党政府が積み重ねてきた戦力保持と交戦権を禁じる同条2項の解釈との整合性とも明らかに矛盾抵触するものである。
また、いわゆる新3要件の「我が国と密接な関係にある他国」、「存立危機武力攻撃」、「(この攻撃を)排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」などの概念は極めて漠然不明確であり、濫用の恐れが高いことは明らかである。

3 「重要影響事態法」(周辺事態法)の危険性
(1)活動内容の拡大
政府は、現行の周辺事態法を「重要影響事態法」へ「改正」し、地理的制約を排除しようとしている。
現行の周辺事態法は日米ガイドラインに基づく防衛協力の範囲に「周辺事態」という地理的制約を設けていた。これに対し「改正」法案は「わが国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)という極めて曖昧な概念を残したまま、「周辺事態」という概念を撤廃した。これにより「重要影響事態」に該当すれば地理的制約なく自衛隊の「支援活動」が可能となり、「地球の裏側まで」自衛隊が派遣されることにもなりかねない。
(2)「武力行使との一体化」は明らか
また、自衛隊の「支援活動」は、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも行われ、従来の周辺事態法やテロ特措法、イラク特措法などでは禁じられていた「弾薬の提供」も可能となっている。こうした活動は、まさに「武力行使と一体化」していると言え、国際紛争を解決する手段として武力行使を禁じている憲法9条1項に抵触することは明らかである。

4 海外派兵恒久化法(「国際平和支援法」)の危険性
また、個別の立法措置をとらずとも米軍やその他の国の軍隊の一員として自衛隊を海外に派兵できる海外派兵恒久化法(「国際平和支援法」)も審議されている。同法案は、建前上は例外なき国会の事前承認を必要としているが、事実上は国会で多数を占める政府与党に海外派兵のお墨付きを与えるに等しい内容である。
先のイラク戦争では米国が国連決議のないまま大量破壊兵器の保持を理由にイラクを攻撃・占領したが、大量破壊兵器の存在は確認されずその正当性は否定された。新法が成立すれば、同様のケースで米軍からの派兵要請が想定されるが、その場合に政府がこれを拒めるとは考えられず、わが国が同様の侵略戦争に巻き込まれることは避けられない。同法案はかかる危険を内包している。
  また、自衛隊の「支援活動」に地理的な限界がないこと、「現に戦闘行為が行われていない現場」以外での活動が認められていることなどの問題点は前項と同様である。

5 国連平和維持活動(PKO)法「改正」の危険性
自衛隊が海外で国連平和維持活動(PKO)を行う際、現行法は小型武器の使用を「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員、隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」の生命や身体を防衛する場合に限定して認めている(同法24条3項「自己保存型」)。
ところが、「改正」法案には、いわゆる「駆け付け警護」のための武器使用、および治安掃討作戦(治安維持活動)での任務遂行のための武器使用を解禁する内容が盛り込まれている。
これらの武器使用は相手からの妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を殺傷の現場にさらし、さらには戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。とりわけ治安掃討作戦は、軍隊による軍事活動と変わるところはなく、憲法9条1項が禁ずる武力行使にほかならない。

6 戦争法案の成立を許さない国民、研究者の声の高まり
上記のほか、船舶検査法、米軍等行動関連措置法(現・米軍行動関連措置法)、特定公共施設利用法、海上輸送規制法、捕虜取扱法、国家安全保障会議設置法を「改正」する法案が今国会に提出されている。
これらの諸「改正」は、憲法9条違反であるばかりか、戦後70年を通じて改憲の動きとたたかって守り抜いてきた平和国家を立法によって破壊する暴挙であり、断じて許すことはできない。
こうした安倍内閣の暴走に対して多くの国民は反対の声を挙げている。法案を今国会で成立させる必要があるかどうかについては、「必要はない」との回答は60%に達し、「必要がある」との回答23%を大きく引き離した(5月16日、17日実施。朝日新聞社)。また、法案の内容について「十分に説明しているとは思わない」との回答が80%を超えた(5月30日、31日実施。共同通信社)。多くの国民も戦争立法に対する危惧を抱いており、その結果が反映されたものと言えよう。
さらに、6月4日に開催された憲法審査会では自民・公明・次世代の党推薦の長谷部恭男教授(早稲田大・憲法)を含む3名の学者が明確にこの戦争法案は憲法に違反すると断言した。また、当部会の多数の会員を含む234名もの憲法学者が戦争法案は憲法に違反するとのアピールに賛同している(6月26日午前8時現在)。

7 日本の歩むべき道は「戦争」「武力行使」ではない 〜戦争法案の撤回を求める
本総会では、日本国際ボランティアセンター代表理事の谷山博史氏の講演を聴き、武力によらない国際貢献の豊富な実践例を学んだ。紛争地の活動現場では、外国軍による武力行使や軍事に頼る「国際貢献」が、自国民を守る上でも国際紛争を解決する上でも十分な効果を発揮しえないという現実があった。いま、平和構築に関する国際的な議論では、「軍事活動よりも非軍事的活動が重要」という認識が高まっている。
こうした非軍事の活動にこそ、平和主義の理念をもつ日本が目指すべき国際貢献の道がある。
憲法の定める平和主義の堅持を求めて設立されたわたしたち青年法律家協会弁護士学者合同部会は、その設立の趣旨に今一度立ち返り、政府・与党に対して海外での武力行使を許す戦争法案に対して反対し、ただちに廃案とするよう強く求める。
2015年6月28日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 6 回 定 時 総 会 
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