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安保法制(戦争法案)の廃案を求める法律家6団体の共同アピール |
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安倍晋三内閣は、本年5月15日、武力攻撃事態法、自衛隊法など既存10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」を国会に提出した。この二つの法案は、以下に述べるとおり、上程までの手続きが憲法に違反するとともに、内容においても、これまで政府が違憲としてきた集団的自衛権の行使を可能とし、自衛隊が米国等の他国軍隊とともに、地理的限定なく、有事平時を問わず緊密に協力して武力を行使することも解禁する内容となっており、憲法第9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の平和主義を根底から覆す「戦争法案」そのものに他ならない。
私たち法律家6団体は、憲法違反の戦争法案の即時廃案を強く求めるものである。
1. 立憲主義・民主主義に違反する手続き
昨年7月1日の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法違反」という60年以上にわたって積み重ねられてきた政府解釈を、一内閣の判断で覆す暴挙であり、さらに、日米両政府は、本年4月27日、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を、現行安保条約の枠組みさえも超える「グローバルな日米同盟」をうたうものに改定し、同月29日、安倍首相は、米国上下両院議員の前での演説の中で、法案の「この夏までの成立」に言及した。
安倍政権のこうした一連の政治手法は、立憲主義に違反し、国民主権を踏みにじり、「国権の最高機関」たる国会の審議をないがしろにするものである。
2. 歯止めのない集団的自衛権行使
自衛隊法と武力攻撃事態法の改正は、集団的自衛権の行使を認めるもので違憲である。「存立危機事態」、「対処基本方針」に規定されたいわゆる新3要件は、極めて漠然不明確であり、なんらの歯止めにもならない。秘密保護法とのセットにより政府の裁量ひとつで、集団的自衛権を行使する道を開く危険がある。また、その際の対処措置を、国だけでなく地方公共団体や指定公共機関にも課すことも重大問題である。
3. 米軍等に対し地球のどこでも戦争協力(後方支援)
他国軍隊に対する自衛隊の支援活動としての、重要影響事態法案における「後方支援活動」と国際平和支援法案における「協力支援活動」は、いずれも、活動領域について地理的な限定がなく、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも可能となり、支援の内容も「弾薬の提供」も解禁するなど、憲法第9条1項が禁ずる「武力の行使」そのものである。「支援活動」中の自衛隊は、当然に相手(国)の攻撃対象となるほか、戦闘現場で展開中の米軍等が、相手(国)から攻撃されれば、その場でなし崩し的に集団的自衛権の行使(戦闘状態に突入)となる危険性が大きい。
4.PKO法の大幅改変〜テロとの戦争に日本が参戦も
改正法案は、国際社会の平和と安全確保の名目で、国連決議がない場合でも、関連機関、地域的な国際機関から要請があれば、自衛隊が、米軍及びその他の国の軍隊とともに、紛争終結後の治安掃討作戦(治安維持活動)や駆け付け警護活動を行うことを可能とし、且つ、任務遂行のための武器使用を解禁する内容となっている。これは、国際平和支援法案とともに、今後自衛隊が、アフガン戦争でのISAFやイラク戦争での多国籍軍等に参戦することを可能とするものであり、また、米国の主導する「テロとの戦争」に日本が積極的に加担する道を開くものである。武力による制圧が、テロを抑止するものではなく、国際平和の維持には逆効果であることは歴史が証明している。
5.平時から米軍等と「同盟軍」関係を構築・米軍等防護のため武器使用
自衛隊法改正案は、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している」米軍等の武器等防護のために自衛隊に武器の使用を認める。これは、自衛隊が米軍等と警戒監視活動や軍事演習などで平時から事実上の「同盟軍」としての行動をとることを想定するものであり、周辺諸国との軍事的緊張を高め、偶発的な武力紛争を誘発して、なし崩し的な米軍等との集団的自衛権の行使にも繋がりかねず、日本を戦争に巻き込む危険性を飛躍的に増大させるものである。
6.結語
安倍首相は、「専守防衛は変わらない」「戦闘行為を目的にして外国の領土に上陸することはない」「戦争に巻き込まれることは絶対にない」「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、今後とも決してない。」などと答弁するが、不誠実であり、欺瞞というべきである。また、自衛隊員の生命のリスク、日本人がテロの標的とされるリスクを一切語らないことは、国民の命よりもアメリカの利益を重視すると批判されてもやむを得ない姿勢である。
私たち法律家6団体は(構成員延べ7000名)は、広範な国民とともに、平和主義、立憲主義、民主主義に反し、日本を戦争する国にし、自衛隊員をはじめとする国民および他国民の命を危険にさらす本法案の即時廃案を求めて、今後とも一層の努力を尽くす決意であることをここに表明する。
以上 |
2015年6月2日
法律家は安保法制を許さない6・2院内集会 |
社会文化法律センター |
代表理事 |
宮 里 邦 雄 |
自 由 法 曹 団 |
団 長 |
荒 井 新 二 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会 |
議 長 |
原 和 良 |
日本国際法律家協会 |
会 長 |
大 熊 政 一 |
日本反核法律家協会 |
会 長 |
佐々木 猛 也 |
日本民主法律家協会 |
理 事 長 |
森 英 樹 |
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