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文官統制を事実上廃止する防衛省設置法の改悪に強く反対する決議

 政府は、2015年3月6日、防衛省内部の意思決定に際して、内部部局の事務官(背広組)が自衛官(制服組)より優位と解釈する根拠となってきた防衛省設置法12条を「改定」し、背広組と制服組を同等と位置付ける「改定」案を閣議決定した。また、自衛隊の運用を担当している内部部局の運用企画局を廃止し、業務を制服組の統合幕僚監部に一元化する点についても閣議決定した。今後、これらの「改定」案は、通常国会に上程されると報じられている。


 現行の防衛省設置法12条は、防衛相が制服組トップの統合幕僚長や陸海空の各幕僚長(陸上、海上、航空)に対して指示したり、陸海空自衛隊や統合幕僚監部を監督したりする際、背広組の官房長と局長が「防衛大臣を補佐する」と定めている。いわゆる「文官統制」である。これにより、背広組が直接防衛相に助言をしたり、制服組の主張を退けたりすることが可能となっていた。
 こうした背広組を優位とする規定は、戦前に軍部が侵略戦争に暴走した悲惨な歴史を反省して、1954年の防衛庁(当時)と自衛隊の発足当時に設けられたものであって、かかる規定は、文民統制(シビリアンコントロール)を定めた憲法66条2項の理念を確保するための重要な仕組みの1つとされてきた。
 しかし、これまでも、「文官統制」の理念は弱体化され続けてきた。例えば、制服組による国会や他省庁との連絡交渉を禁じた事務調整訓令が廃止され(1997年)、政治家との直接接触が活発化し、さらに、防衛相と制服組の間に介在し、予算や人事、作戦などを実質的に判断していた背広組の参事官制度が廃止され(2009年)てきた。
 さらにさかのぼれば、当時の防衛庁の統合幕僚会議事務局によって検討された「昭和38年度統合防衛図上研究」(いわゆる「三矢研究」)事件がある(1965年)が、これは、「制服組」が、朝鮮半島有事における自衛隊の防衛出動や戦時立法などを極秘裏に研究した事件であった。また、来栖弘臣統合幕僚会議議長(当時)が「奇襲侵略を受けた場合、・・・超法規的行動に出ることはありえる」と暴走を容認する発言をした事件がある(1978年)。このように「制服組」による「文官統制」を逸脱する事実上の憲法蹂躙は少なからず現れていたのである。
 さらに今回、この「改定」案が成立すれば、背広組と制服組は同等の位置づけとなり、もはや事実上「文官統制」は廃止されることになり、制服組の発言力がさらに強化され、政治家と「実力組織」(自衛隊)が直結することになりかねない。


 こうした「改定」案提出の背景には、災害派遣やPKO(国連平和維持活動)などを通じた国民の自衛隊への支持の高まりと、それとともに膨らんできた制服組や自衛隊出身の国会議員の不満がある。元自衛官出身の中谷元防衛相は、現場部隊との連絡調整について、背広組を介していては時間がかかりすぎており、制服組に任せるべきだとの持論を述べ、背広組への不満を隠そうとはしない。
 そして、より大きな要因として、自衛隊をこれまで以上に米軍に従属させて海外派兵させたいという米国の強い思惑がある。


 同「改定」案が成立し、さらに集団的自衛権行使を可能とする法制度が施行されてしまえば、首相や防衛相による即応指揮体制が確立し、「背広組」による関与すらも一切排除され、いままで以上に米国の要求のままに迅速に自衛隊を海外へ派兵できる体制が作られることになる。
 私たち青年法律家協会弁護士学者合同部会は、同「改定」案の閣議決定に抗議するとともに、政府が同「改定」案を国会に上程することのないよう強く求める。
2015年 3月 7日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 4 回 常 任 委 員 会
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