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集団的自衛権行使等を具体化する「戦争立法」に強く反対する決議
1 本格化した戦争立法の動き

 本年2月13日以降、自民・公明両党は、昨年7月に閣議決定した集団的自衛権行使容認を具体化するための安全保障法整備に関する与党協議を急ピッチで進めている。報道によれば、3月中に関連法案全体の骨格をまとめ、全体で14からなる法案を一体のものとして5月の大型連休後に通常国会に上程するという。以下に見るとおり、これらの法案は、いずれも平和憲法の理念(前文、9条)を踏みにじる戦争立法であって、国会への上程を決して許してはならない。

2 グレーゾーン事態対処をめぐる危険な動き

 まず、武力攻撃に至らない侵害(「グレーゾーン」事態)について、政府は、日本周辺で警戒活動や訓練実施中の米艦を自衛艦が防護できるようにする法整備をめぐり、昨年7月の閣議決定では米艦に限定していた防護対象を米軍以外の国に拡大する法整備を検討している。また、本来であれば自衛隊が自らの武器を防護するために設けられていた武器使用の規定についても、閣議決定で言及された米軍のみならず、米軍以外の他国軍防護にも転用するための法整備も検討を始めた。
 しかし、そもそも「グレーゾーン」事態について、警察・海上保安庁ではなく自衛隊によって対処させることは、かえって紛争や対立を激化させ、偶発的な武器使用から本格的な武力行使に途を開くことになりかねず、国際紛争は非軍事的な努力で解決を図るべきとした平和憲法の理念とは相容れない。
 そして、それだけでも許されないはずのところ、さらに、米艦や米軍の武器、加えて他国の艦船や他国の武器をも防護対象とすることは、警察活動の範囲をはるかに超え、相手方次第ではまさに集団的自衛権の行使そのものとなる。これらの方針は閣議決定の内容からも逸脱しており、自衛隊と米軍その他の軍との軍事的一体化を一層進めるものとなっている。
 さらに、政府は、自衛隊への発令手続きの「迅速化」を目指すとして、従来の「持回り閣議」をも廃し、電話での「閣議」を認める方針を打ち出している。日本版NSCが設置された状況下では、内閣による自衛隊のコントロールすら危うくさせる内容と言わねばならず、容認できない。

3 日本防衛を口実にした戦争支援の拡大

 また、朝鮮半島有事などを想定して定められた「周辺事態法」についても、その「改定」が目指されている。「周辺事態」とは、日本への武力攻撃はないが、そのまま放置すれば「我が国周辺の地域」で「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」を指し、その際に武力行使をする米軍に対して自衛隊が補給・輸送・医療などの後方支援を行うというものである。このように、従来はまがりなりにも日本の周辺地域において平和と安全を確保するという建前があった。
 しかし、今回の「改定」では、これまでの「我が国周辺の地域」という法文や国会答弁などで限定されていた地理的な制約を事実上なくし、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」であれば、世界のどこで発生しても軍事支援を可能にするものとされようとしている。また、米軍に限定している支援対象をそれ以外にも拡大すること、現行は制限されている武器・弾薬の提供などを可能にすることが狙われている。
 また、唯一残された「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」という要件も極めて曖昧で、例えば石油の輸入等経済情勢にも拡大しうるものであって、これでは何らの制約にもなっていない。
 加えて、現行では「周辺事態」という地理的な制約がかけられている「船舶検査」(臨検)についても、その制約を外して全世界で行えるものとし、しかも船長の承諾なしに強制的な船舶検査を行なえるものとすると報じられている。そして、現在は正当防衛に限定している武器使用権限を拡大することも検討している。そもそも、国際法では、軍による強制的な船舶検査は武力の行使とみなされているところ、まさに船舶検査の場面でも平和憲法を蹂躙する「改定」が検討されている。
 これらの「改定」は、「我が国の平和と安全」を守るということを口実に、自衛隊を世界中どこでも派兵し、米軍が行うあらゆる戦争を支援できるようにする仕組みづくりに他ならない。

4 国際貢献を口実にした自衛隊の恒久派兵

 さらには、「国際社会の平和・安定のために活動する他国軍隊への支援活動」を口実とする自衛隊の海外派兵恒久法の制定も狙われている。これまで、自衛隊の海外派兵は、米国のアフガニスタン報復戦争での「テロ特措法」やイラク侵略戦争での「イラク特措法」のように、事態に応じて目的と時期等を限定して法制度化されてきた。しかし、この恒久派兵法を作ることによって、これまでのように個別の法律をつくる手間を省き、内閣の判断だけでいつでもどこでも派兵できる体制を確立しようとしているのである。
 そして、派兵の要件として、「国連決議等」と「等」を含めることで、必ずしも国連安保理決議が必要とはされず、いわゆる有志国連合の武力行使に対しても支援を可能にしようと目論んでいる。これにより、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う有志連合への後方支援も法律上は可能となる。
 また、派兵地域に何らの地理的制約を設けず、支援対象の国も限定しないとされている。
 自衛隊恒久派兵の狙いも、米軍が行うあらゆる戦争を支援させる仕組みづくりに他ならない。

5 自衛隊の活動の拡大

 そして、上記の3、4のいずれの場合でも、自衛隊の活動範囲を絞ってきたこれまでの「後方地域」(周辺事態法)や「非戦闘地域」(旧テロ特措法、旧イラク特措法)の概念を取り払い、国連平和維持活動法(PKO法)などを「改正」し、「現に戦闘行為を行っている現場」(戦闘現場)以外なら自衛隊の活動を認めるとしている。
 そして、自衛隊の武器使用についても、離れた場所で武装集団に襲われている他国部隊などを救援する「駆け付け警護」や、輸送任務などを妨害する武装集団の排除や治安維持任務を可能とする「任務遂行」目的にまで範囲を拡大させようとしている。 これでは、今まで以上に自衛隊が武力攻撃に巻き込まれる可能性が高まるとともに、自衛隊の活動そのものが明白な「武力の行使」に該たることになる。そもそも、安倍首相自身が、自衛隊が攻撃を受ければ応戦することを認めているのである。
 また、在外邦人の救出への自衛隊の利用については、これまで「輸送」(空路、海上に加えて陸上)のみが認められていたところ、政府は、邦人救出は警察的活動であり、たとえ武器を使用しても相手が国家や「国家に準ずる組織」でなければ、憲法9条が禁じる武力行使には該たらないと主張し、一定の条件のもと、自衛隊活用の方針を示した。しかし、自衛隊の出動となれば、相手方との武力の応酬に陥ることは避けがたく、かえって日本が紛争の当事国となり危険が増すと言える。また、政府の方針は、かつて「居留民の保護」が侵略の口実とされてきた戦前の教訓から何も学んでいない。「邦人救出」を口実にした海外派兵も決して許されない。

6 集団的自衛権行使の具体化

 さらに、政府は、集団的自衛権に基づく武力行使の「新3要件」のうち、第1の要件について、米国など密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立や国民の生命が根底から覆される明白な危険がある場合を「存立危機事態」とする方針を固めた。そして、これまで自衛権発動の要件を定めていた武力攻撃事態法における「武力攻撃事態」に加えて、上記「存立危機事態」を新たに武力行使の要件として加えるとしている。
 安倍首相は、米国など日本と密接な関係のある国が先制攻撃をした結果、その相手国から武力攻撃を受けた場合であっても、集団的自衛権の発動は可能であると述べており、文字通り、あらゆる戦争への加担が目指されている。そして、上記「存立危機事態」の一例として、ペルシャ湾ホルムズ海峡での機雷敷設が挙げられており、経済危機も集団的自衛権行使の対象となることが明言されており、政府による恣意的な拡大解釈に歯止めがかかっていない。

7 戦争立法を断じて許さない 

 自民・公明両党は、昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定を踏まえて、「日本防衛」「国際貢献」を口実に、自衛隊を海外に自由に派兵し、米国の行うあらゆる戦争に協力させようとしている。両党あわせれば、衆議院および参議院の議員数のそれぞれ過半数を占めており、上記の戦争立法が出そろえば、いずれも強行採決しかねない極めて危機的な状況にある。
 その一方で、このような戦争立法に対して反対ないし慎重な姿勢を国民は示している。集団的自衛権の行使に反対する声は半数を占め(2015 年 1 月 17日18 日。毎日新聞世論調査で 50%)、集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障関連法案を今国会に提出する政府方針に関しては「時間をかけるべきだ」との回答が過半数を占めた(同年2月6日7日。共同通信世論調査で54.9%)。
 憲法の定める平和主義の堅持を求めて設立されたわたしたち青年法律家協会弁護士学者合同部会は、その設立の趣旨に今一度立ち返り、安倍政権の暴走に歯止めをかけるよう全力を尽くすことを宣言するとともに、政府・与党に対して、海外での武力行使を許す戦争立法の制定の動きをただちに中止するよう強く求める。
2015年 3月 7日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
 第 4 回 常 任 委 員 会
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