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「新たな刑事司法制度の構築」に関する法制審議会の法改正要綱に反対する議長声明
 2014年9月18日、法制審議会は、「新たな刑事司法制度の構築」に関する法改正要綱(以下、本要綱という)を全会一致で採択し、法務大臣に答申した。法務省は来年の通常国会に刑事訴訟法等の改正案を提出する方針とされている。

 本要綱は、「新たな刑事司法制度を構築するための法整備」として、@取調べの録音・録画制度の導入、A捜査・公判協力型協議・合意制度及び刑事免責制度の導入、B通信傍受の合理化・効率化、C身柄拘束に関する判断の在り方についての規定の新設、D弁護人による援助の充実化(被疑者国選弁護制度の拡充)、E証拠開示制度の拡充、F犯罪被害者等及び証人を保護するための方策の拡充、G公判廷に顕出させる証拠が真正なものであることを担保するための方策等、H自白事件の簡易迅速な処理のための方策を「一体としての制度」として法整備することを求めている。

 しかしながら、本要綱は、「時代に即した新たな刑事司法」を目指すと謳いながらも、その本質、狙いが捜査権限の拡大、治安維持の強化にあることは明白であり、冤罪防止、被疑者・被告人の適正手続保障への配慮は完全に無視ないし形骸化されてしまっている。

 本要綱は、憲法違反であることが明白である通信傍受法(盗聴法)の対象の拡大、被疑者・被告人の適正手続保障の弱体化をもたらすビデオリンク方式による証人尋問の拡充、誤判の危険性が高まる司法取引制度の導入など、誤判、冤罪防止とは全く観点の異なる制度を「一体として」法整備することを求めており、そこには、憲法が保障する適正手続保障の理念、黙秘権をはじめとする刑事手続上の人権保障の観点が全く欠如していると言わざるを得ない。

 他方で、冤罪防止の観点から注目されていた取調べの録音・録画制度は、憲法上極めて重要とされる黙秘権保障、取調受忍義務の問題を当初から議論の枠外に置いて議論が進められた結果、対象事件が極めて限定された上、例外事由も捜査機関による恣意的運用を許しかねないほど広範に認められてしまっている。

 そもそも、本要綱は、厚生労働省郵便不正事件(いわゆる村木事件)などの冤罪事件や同事件にまつわる検察の不祥事を契機として、2011年6月に法務大臣が諮問した「時代に即した新たな刑事司法制度に関する諮問92号」に基づいて法制審議会が「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下、特別部会という)を設置したという経過があり、こうした経過からみて、特別部会では誤判や冤罪の防止、なかんずく違法・不当な取調べの防止など糾問的な取調べに依存した捜査・公判の在り方の改善をめぐる議論がなされることが国民的に期待されていた。

 しかるに、特別部会での議論は、こうした国民的期待に反し、法務官僚、警察官僚とそれに同調する一部の刑事法研究者らの主導により捜査権限の拡大、治安維持の強化の方向に議論が進められ、2013年1月には「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」(以下、「基本構想」という)が公表され、その「基本構想」に示された理念と制度設計の枠組みに従い、作業分科会における検討を経て、2014年7月9日、最終的な取りまとめ案が全会一致で承認され、これを受けて法制審総会において本要綱が承認されるに至ったものである。

 結局のところ、本要綱が示している刑事司法制度は、本来の目標であったはずの誤判・冤罪防止から捜査権限の拡大、治安維持の強化に大きく舵を切ったものであることは明白である。

 当部会は、この間、こうした特別部会の議論を批判的に検証し、2014年2月に、「『基本構想』に基づく『新時代の刑事司法制度』の立法化に反対する意見書」を公表し、さらにその後出された「事務当局試案」(2014年4月30日)及びその「改訂版」(2014年6月23日)に基づく最終的な取りまとめに対しても、「『事務当局試案』に基づく『新時代の刑事司法制度』の立法化に反対する意見書」(2014年6月29日)を公表してきたところである。

 捜査権限の拡大、治安維持の強化は、日本国憲法が保障する諸価値への攻撃に他ならず、今回の要綱は、憲法「改悪」、特定秘密保護法、国家安全保障基本法案、新防衛大綱、閣議決定による集団的自衛権行使容認など一連の現政権による軍事大国化政策及び社会保障の削減・弱体化、格差貧困を増大させる経済政策等と軌を一にする危険な策動と言わなければならない。

 当部会は、このような基本的人権を侵害し憲法的価値の破壊をもたらす刑事法の改正には断固反対であり、ここに改めて反対の意思を表明し、今後の立法化を阻止するためのあらゆる運動を展開していくことを決意するものである。
2014年10月3日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議  長   原   和 良
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