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少年法「改正」に強く抗議する議長声明
 本年4月11日、検察官関与対象事件の拡大、厳罰化を内容とする少年法「改正」法案が成立した。

 しかし、本「改正」法は、以下のような少年法の基本理念に反する重大な問題点があるため、当部会は本「改正」法の成立に強く抗議する。

1.
 少年審判は、刑事裁判とは異なり、非行を行った少年を非難し刑罰を与えるのではなく、可塑性に富む少年の「健全な育成」のために、少年の非行性を解消する処遇を決定することを目的としている(少年法1条)。このため少年審判は「懇切を旨として、和やかに行う」(少年法22条1項)とされており、少年と裁判官の対話を通じて適切な処分が決定される審理構造となっている。

 しかしながら、刑事責任の追及を職責とする検察官を少年審判に関与させることは、少年に心理的圧迫を与え、萎縮させるという点で上記少年法の目的・構造と根本的に矛盾するばかりでなく、予断排除原則や伝聞法則の適用もない少年審判において、えん罪の危険が高まり、事実認定の適正化という本「改正」の目的にも反するものである。既に検察官関与制度が導入された2000年改正後にえん罪が発生している事実を深く反省すべきである。

 本「改正」法の成立により、検察官関与対象事件が拡大されたことで、観護措置をとられた少年の終局処分のうち、約5.5%だった対象事件が、約82%まで拡大されることになり(2011年の資料に基づく。)、少年法の保護主義の理念は根底から崩壊してしまいかねない。

2.
 本「改正」法は、刑期の引き上げ等による厳罰化も内容とするものであるが、可塑性に富む少年に必要なものは「育ち直し」であり、社会から隔絶された刑務所に少年を長期収容することは、その更生を阻み、自立を困難にするものである。

3.
 これら検察官関与対象事件の拡大及び厳罰化は、法改正を支える十分な立法事実が存在しないうえに、その目的と効果が十分に検証されることもなく、わずか短時間の審議において成立しており、あまりに拙速なものである。
 また、これら「改正」は、国際準則に矛盾し、国連子どもの権利委員会による勧告を無視するものであって、国際基準に照らしても到底容認できるものではない。

4.
 本「改正」法は、国選付添人対象事件の拡大も内容としているが、これは、成長・発達過程にあり表現力・理解力に乏しい少年の適正手続保障をする上で不可欠の制度であるから、法改正として当然の方向であるが、今なお対象事件が限定されていること、国選付添人の選任は裁判所の裁量とされている点で不十分である。

 また、国選付添人対象事件の拡大は、検察官関与対象事件の拡大と一体のものとして扱われているが、両制度の間には、全く論理的関連性がなく、同時に拡大する必要がないことは明らかである。国会審議では、今後もセットでの議論が必要であるかのような答弁がなされているが、国選付添人対象事件の拡大をもって、検察官関与対象事件の拡大が是認されることは決してあってはならない。

5.
 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、これまで、以上のような少年法の基本理念と根本的に矛盾する検察官関与対象事件の拡大及び厳罰化を含む本「改正」法案には断固反対し、すでに2013年6月12日と2014年2月1日に反対声明を発表している。

 今回、本「改正」法が成立したことに対し、当部会は、強く抗議するとともに、今後の運用を監視し、少年法の理念に沿った再改正がなされることを求める。
2014年5月14日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長  原   和 良
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