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少年法改正に反対する緊急声明
 2014年第186回通常国会において、少年法改正案が上程される予定である。当該改正案は、@少年が非行事実を争った場合などに、裁判所の決定により、検察官が少年審判に関与できる事件の対象範囲を長期3年を超える懲役・禁錮にあたる罪までに拡大すること、A少年に対する不定期刑の上限を現行の10年から15年に、無期代替刑の上限を現行の15年から20年に引き上げること等の厳罰化、B国選付添人対象事件の範囲を@と同様の範囲までに拡大すること、を内容としている。

 しかしながら、本改正案には以下のような少年法の基本理念に関わる重大な問題点があるので当部会は断固として本改正案に反対する。

@ 検察官関与対象事件の拡大
 そもそも検察官関与制度は、少年法の保護主義理念及びそれに基づく現行の少年審判の手続構造と根本的に矛盾する制度であり、今回の改正案は、かかる矛盾をさらに拡大させることになる。

 少年審判は、非行を行った少年を非難し刑罰を与えるのではなく、可塑性に富む少年の「健全な育成」のために、ケースワークを通じて少年の非行性を解消する処遇を決定することを目的としている(少年法1条)。このため少年審判は、「懇切を旨として、和やかに行う」(少年法22条1項)とされており、少年と裁判官の対話を通じて適切な処分が決定される審理構造となっている。
 しかしながら、検察官は、刑事責任の追及を行うことを職責としており、少年の「健全な育成」を担う専門性を有していない。また、少年審判は成人の刑事裁判と異なり、予断排除の原則も、伝聞法則の適用もなく、裁判官は審判が始まる前に、違法収集証拠を含めた全ての証拠に接することが制度上前提とされている。このように成人の刑事裁判よりはるかに不利な状況下で、さらに責任追及のプロである検察官を審判に関与させることは、少年に心理的圧迫を与え、萎縮させるものであり、大人の刑事裁判よりもえん罪の危険が生じるものである。検察官関与制度は、少年法の保護主義理念と矛盾することはもとより、事実認定の適正化という見地からも採りえない制度である。そして、これらの検察官関与制度のもつ問題性は、少年に付添人を付けたからといって解消するものではない。
 なお、2000年の少年法改正で、既に検察官関与制度は導入されているが、検察官関与制度導入には上記のような少年法の保護主義理念との矛盾抵触があることから弁護士会をはじめとする広範かつ強力な反対運動が展開されたことは記憶に新しいところである。このような反対運動の影響もあり、2000年改正では殺人・強盗・放火などの重大事件に限って検察官関与制度が導入されたのであり、施行後も限定的な運用が続いていた。しかし、本改正案は、関与対象事件を少年事件数として一番多い窃盗罪にまで拡大するものとしており、本法案が成立すれば、観護措置をとられた少年の終局処分のうち、約5.5%であった対象事件が、約82%まで拡大されることになる(2011年の資料に基づく。)。例外的な位置づけであった検察官関与がむしろ原則化するおそれさえあるのである。かかる改正が実現すれば少年審判が職権主義構造を維持したまま刑事裁判化されることになり、少年法の保護主義理念は根底から崩壊してしまいかねない。

A 少年に対する刑の厳罰化
 ここ数年、少年による刑法犯の検挙人数は減少傾向にあり、平成24年は昭和21年以降最も少なかった。また、殺人・強盗・放火などの凶悪犯罪についても、例えば少年による殺人事件は、平成21年では平成12年当時の半分以下となっており、大幅に減少している。少年事件が増加・凶悪化しているから厳罰化すべきという論調があるが、かかる立法事実は存在しないのである。

 また、重大非行事件を起こした少年は、成長過程において虐待やネグレクト等の問題があったケースがほとんどである。彼ら(彼女ら)は成長過程において親の愛情に接することが出来なかった為、自己肯定感が低く他者との関係を構築することが苦手であり、ちょっとしたことですぐにキレてしまう。彼らに必要なのは、「育ち直し」なのであり、社会から隔絶された刑務所に収容することは、可塑性のある少年の更生を阻み、自立を困難にするのみである。

 さらに、10代の少年に20年もの刑を科した場合、出所時には40歳近くになっていることになる。実社会よりも長く刑務所で暮らした元少年が、社会に適合することは困難を極める。

B 国選付添人対象事件の拡大について
 少年は、成長・発達の過程にあり、大人と比して一般に表現力や理解力が乏しく、自分の気持ちや主張を表明する能力も不足している。また、大人に対して萎縮したり、迎合的になることも多く、誘導にも乗りやすい傾向にある。

 かかる少年が捜査官に迎合して、やっていない非行を「やった」と言ってしまうことのないよう、また自分の気持ち、主張を整理し表明することが出来るようにするためには、弁護士である付添人の法的援助が必要である。

 国選付添人対象事件の拡大は、少年の成長発達権に配慮した適正手続保障をする上で不可欠の制度であり、今後も身体拘束を受けている全ての少年が、弁護士付添人の法的援助を受けられる制度への拡張が望まれる。本改正案は、裁量的な拡大に留まるが、身体拘束を受けている全ての少年に対し認められるべきである。

 もっとも、本改正案は、法制審議会の審議経過をふまえてもB国選付添人拡大と@検察官関与拡大について、一体として審議・採択することを企図していることは明らかである。

 前述した通り@検察官関与対象事件の拡大が、少年の権利擁護に反する重大な問題点を孕む以上、一括審議・採択される場合には全体に反対の声を上げざるを得ない。

 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、以上のような少年法の基本理念と根本的に矛盾する少年審判への検察官関与の拡大及び厳罰化提案を含む本改正案には断固反対であり、すでに2013年6月12日「検察官関与の拡大と不定期刑の上限引上げを内容とする少年法「改正」に反対する議長声明」を発表している。

 今回、再度同様の少年法改正案が上程されることから、当部会として、ここに改めて断固反対の意思を表示するものである。
 以 上
2014年2月1日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
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