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安倍首相の靖国神社参拝に対する抗議声明

 2013年12月26日、安倍首相は、現役の首相としては2006年以来7年ぶりに靖国神社に参拝した。報道によれば、安倍首相は、公用車で靖国神社に向かい、本殿に参拝し、「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳し、本殿前に首相名で供花したという。

 靖国神社への参拝は、政教分離原則(20条3項)に反する違憲行為であり、侵略戦争を美化し憲法の定める平和主義(前文、9条)を突き崩すという点で看過できない重大な問題がある。また、首相の憲法尊重擁護義務(99条)にも違反するものである。さらに、侵略戦争の反省の上にアジア諸国との平和・共生・繁栄の道を歩むという日本が求められている外交姿勢を否定するに等しい行為であり、アジア諸国との友好関係に決定的な亀裂を生じさせるものであって、到底許されるものではない。青年法律家協会弁護士学者合同部会は、今回の安倍首相の靖国参拝に対して、強く抗議する。


 日本国憲法は、前述のとおり、政治と宗教との厳格な分離を定めているところ、この厳格な分離は、まさに戦争遂行に大きな役割を果たした靖国神社をはじめとする国家神道との結びつきを禁じることを主眼として定められた。したがって、靖国参拝については特に厳格に違憲性が判断されなければならない。これまでも小泉純一郎首相(当時)による靖国神社参拝の違憲性が争われた訴訟において福岡地裁は、「(靖国神社参拝は)憲法20条3項で禁止されている宗教的活動に当たり、同条項に反する憲法で禁止されている宗教活動に当たる」と明確に違憲であると判断し(2004年4月7日)、さらに大阪高裁でも同旨の判断が示されている(2005年9月30日)。今回の靖国参拝もまた厳然たる宗教活動に当たり、憲法の定める政教分離規定に違反するものである。


 靖国神社には、日本の侵略戦争に駆り出されて命を落とした戦没者が「英霊」と称えられ、祭神として祀られている。祀られている日本人戦没者は誤った国策による被害者であるが、その一方でアジア太平洋諸国の人々にとっては侵略戦争を担った加害者でもある。ましてや、靖国神社には侵略戦争を指導したA級戦犯などの軍人らも神として祀られている。

 さらに、靖国神社は、戦前の軍国主義の精神的支柱であった国家神道の中心的宗教施設として、国民を戦争に動員する上で大きな役割を果たしたが、いまもなお靖国神社はこのことを何ら反省していないばかりか、境内の戦争博物館「遊就館」の展示に見られるとおり、「あの戦争は自衛戦争だった」として正当化している。

 参拝後の記者会見で、安倍首相は、「参拝の目的は不戦の誓いをするため」と述べている。しかし、前述した靖国神社の歴史的な役割と現在の歴史認識に照らしても、また自民党が発表した2014年運動方針から原案にあった「不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現を削除したことからしても、この説明に何ら信憑性がないことは間違いない。


 安倍首相は、従軍慰安婦の強制性はなかったなどと発言し、また、憲法9条の「改正」に強い意欲を見せて、周辺諸国を刺激してきた。さらに、今般、日本版NSC(国家安全保障会議)法、秘密保護法を制定し、武器輸出三原則を見直し、また、防衛大綱を改定して先制攻撃も可能となる方針を打ち出している。
首相が靖国神社に参拝し、「国のための戦死」を美化するのは、集団的自衛権の行使容認によって自衛隊の海外恒久派兵が現実味を帯びてくる中で、自衛隊員の戦死を想定しつつ、再び日本国民のこころを支配し、戦争協力に動員しようとしているのではないかとの強い疑念を抱かせる。


 今回の参拝に対しては、中国や韓国のみならず、アメリカやロシア、国連事務総長、東南アジア諸国、ヨーロッパ諸国からも批判や懸念の表明がなされている。憲法9条の改定や集団的自衛権の行使容認の地ならしであって、日本を外交的に孤立させ、東アジアの平和を脅かす今回の靖国神社参拝に対して、当部会は厳重に抗議するとともに、二度と靖国神社参拝という愚行を繰り返さないよう強く求める。
2014年1月31日
青年法律家協会弁護士学者合同部会 
議 長   原   和 良
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