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国家安全保障基本法案の国会提出に強く反対する議長声明

 2012年7月4日、自民党は総務会で国家安全保障基本法案を機関決定した。政権奪還後にこの法案の成立を目指すとしており、早ければ同法案を2014年の通常国会に提出することが予想される。同法案は、下記に指摘するとおり平和憲法を破壊するものであり、到底内閣法制局の審査は通らないとの見通しから、閣法ではなく議員立法として提出される予定である。憲法違反が明らかな法案を数の力で押し通すもくろみは、秘密保護法の強行採決に通ずるものであり、断じて許されない。


 同法案は、2条2項4号で「国際連合憲章に定められた自衛権の行使については、必要最小限度とすること」とし集団的自衛権の行使を容認している。その上で10条1項1号の自衛権行使における遵守事項として、「我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態であること」と規定するのみで、安保法制懇の報告書で指摘されていた「4類型」を超えて全面的な集団的自衛権行使を可能にしている。

 さらに、8条2項は、「自衛隊は、国際の法規及び確立された国際慣例に則り…行動する。」と規定し、国際法上の解釈に則り侵略戦争以外の戦争を可能にしている。

 これらは、戦争放棄を定めた憲法9条1項、交戦権の行使を否認した憲法9条2項に明らかに反するものであり、平和憲法を破壊するものである。


 さらに同法案は、11条で「我が国が国際連合憲章上定められ、又は国際連合安全保障理事会で決議された等の、各種の安全保障措置等に参加する場合」と規定しており、「等」と表現していることから、国連による武力行使への参加に限定されていない。これは、イラク戦争でみられたような有志連合による武力行使への参加を可能にするものであり、国連軍への参加ばかりか積極的に戦争への参加を想定しているものと言わざるを得ない。まさに「戦争をしない国」から「戦争を積極的にする国」へ変容させるものである。

 このことは、同法案2条1項の安全保障の目的、8条1項の自衛隊の役割において、「非軍事的手段」による侵害、「間接の侵害」「あらゆる脅威」等と規定し範囲を際限なく広げていること、「未然の防止」として先制攻撃も可能となる規定にしていることからも、明らかである。


 上記「戦争を積極的にする国」にすべく、国をあげた軍事化のための規定も至る所に盛り込まれている。12条1項で、「国は……防衛に資する産業基盤の保持及び育成」に配慮すると規定し、軍事産業の保持育成を行うことを予定している。また3条2項において、「国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」と規定し、教育、科学技術等のあらゆる分野において軍事化のための介入を予定している。

 併せて、これらの目的を確実に達するため、4条と3条4項でそれぞれ国民の協力義務と地方公共団体の安全保障に関する施策の実施義務を課すとともに、8条3項で自衛隊の役割として「公共の秩序の維持」を規定し、国民や地方公共団体を監視する体制も整えようとしている。


 以上のように、重大な憲法違反を内容とする法案であるが、同法案3条3項で予定されていた「秘密保護法」、6条で予定されていた「国家安全保障会議設置法」は既に成立している。さらに12条2項で予定されていた「武器輸出三原則の放棄」は南スーダンへの武器輸出によって既になし崩しにされている。

 このように、着実に同法案成立に向けて関係法案を整備し、武器輸出の既成事実化を図っているのであり、同法案を是が非でも成立させる意図が見受けられる。

 青年法律家協会弁護士学者合同部会は、日本の再軍備が始まり、個人の自由が否定される危機に瀕した1954年、「平和」と「民主主義」を守ることを呼びかけて設立し、それ以来平和憲法の改悪の動きに一貫して反対し、多くの国民と共に平和憲法を守る活動を推し進めてきた。

 今まさに、軍事化に向けて舵が切られ、平和憲法を改悪しようとする数々の動きに対し、設立の趣旨に立ち返り、全力を挙げて反対するものである。

 平和憲法を破壊するような国家安全保障基本法案を国会に提出することのないよう強く求めると共に、万が一国会に提出された場合は同法案の成立を断固阻止することを決意する。
2014年1月31日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長   原   和 良
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