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憲法9条及び武器輸出三原則を無視し、南スーダンでPKOにあたる軍隊に銃弾1万発の武器提供をしたことに強く抗議する議長声明 |
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2013年12月23日、日本政府は、国家安全保障会議及び持ち回り閣議で、南スーダンで国連平和維持活動(以下「PKO」という)を実施中の自衛隊が保有する銃弾1万発を、PKO協力法を根拠に、同国に派遣中の韓国軍に無償譲渡することを決定し、同日武器提供を行った。
韓国軍の武力行使と一体をなした武器提供は、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と定める憲法9条1項に反し、断じて許されない。かかる憲法違反を強行したことに強く抗議する。
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青年法律家協会弁護士学者合同部会は、2011年12月3日に「日本政府に対し南スーダンへの自衛隊施設部隊の派遣決定の撤回を求める決議」を発表した。同決議を通し、海外における武力行使につながる自衛隊の海外派兵自体憲法9条1項違反であること、PKO5原則に違反しうる派遣であること、道路整備等の社会資本整備という活動目的からすれば軍事組織である自衛隊の派遣は不合理であること等を指摘し、南スーダンへの自衛隊派遣に強く反対してきた。それにも拘らず南スーダンへの派遣を続行し、道路整備という目的からは不合理な程の大量の銃弾を海外で保有し、これを軍隊に提供したものであり、かかる憲法9条違反を決して許すことはできない。
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そもそも、1967年の佐藤内閣において武器輸出三原則を定め、さらに、1976年の三木内閣において、武器の輸出については、平和国家としての立場から、国際紛争等を助長することを回避するため、三原則対象地域以外の地域にも、憲法等の精神にのっとり、武器の輸出を慎むとする政府統一見解を発表している。
それにも拘らず、政府は武器提供にあたり、「緊急の必要性・人道性が極めて高い」ことを理由として、「武器輸出三原則等によらないこととする」という官房長官談話を発表した。
これは、武器輸出三原則及び武器輸出に関する政府統一見解の趣旨を蔑ろにし、武器輸出三原則のなし崩し的例外を認めるものであり、平和国家としてあるまじき行為である。
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PKO協力法は、日本から国際機関に対する物資協力を認めているが、政府は1998年の国会答弁で「人の殺傷、物の破壊を目的とする武器・弾薬の供与を要請されることは想定していない」「国際機関の要請があっても応じない」との方針を示し、一貫して武器弾薬の提供には応じない立場をとってきた。ところが、かかる政府答弁も無視し、PKO協力法の解釈として武器弾薬の提供は排除されていない等と述べ、その時々に都合のよい解釈をし、まさに国民を欺く行為としか言いようがない。
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かかる暴挙の背景には、官房長官談話でも掲げられているように安倍首相が打ち出した「積極的平和主義」の考え方が如実に現れている。武器提供を決めるわずか6日前の12月17日、政府は「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の基本理念及び基本方針において「積極的平和主義」を打ち出した上で、「防衛装備品の活用等による平和貢献・国際協力に一層積極的に関与する」、「武器等の海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める」として、武器輸出三原則の見直しを進める方針を発表している。まさに、本件武器提供は、かかる方針に基づき武器輸出三原則のなし崩し的例外を拡大させ、武器輸出三原則の精神を骨抜きにしようとするものと言わざるを得ない。加えて、今回の武器提供は、政府が上記防衛計画の大綱でも目指している日韓版ACSA(物品役務相互提供協定)の先取りとも言えるものである。
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また、武器輸出三原則という憲法の理念に関わる重要な事柄を、国民に全く説明のないまま不透明な4者会合(国家安全保障会議)で決定したことも強く非難されるべきである。密室で政府答弁を簡単に覆して国民を欺く行為はまさに、国家安全保障会議設置法の危険性が早くも出たものであり、さらに秘密保護法が施行されれば暴挙が横行するのは明らかである。一連の、国家安全保障会議設置法、秘密保護法、国家安保戦略及び防衛大綱、国家安全保障基本法案に一層強く反対する。
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当部会は、憲法9条及び武器輸出三原則を無視し、南スーダンでPKOにあたる軍隊に銃弾1万発の武器提供をしたことに強く抗議するとともに、400人規模と言われている自衛隊派遣を直ちに撤退させ、平和憲法の理念に則り、平和のための非軍事的支援を行うことを強く求める。 |
2013年12月27日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長 原 和 良 |
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