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米海軍ヘリコプター墜落事故に抗議する議長声明 |
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2013年12月16日、米海軍厚木基地第5空母航空団所属のヘリコプターMH60Sが、神奈川県三浦市三崎5丁目の埋め立て地に墜落し、乗員4人のうち2人が重傷を負う事故が発生した(以下「本件事故」という)。事故機のメーンローターや尾翼が大破して、機体が横転していることや、乗員が「後部のローター部分が停止した」と説明していたことからみて、事故機に深刻なトラブルが発生したものと推測される。事故機の墜落現場の近くには、漁業関連施設や住宅地が隣接しており、一歩間違えば、市民の生命が奪われるような大惨事につながなりかねない重大事故であった。
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同ヘリコプターは、米海軍横須賀基地を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンの艦載機であるところ、空母の入港時には横須賀基地と厚木基地との間を頻繁に飛行していると言われており、住宅地において同様の事故が再び発生する危険がある。
神奈川県においては、1977年9月、米軍航空機が横浜市緑区(現・青葉区)の住宅地に墜落し、母子を含む住民が9名死傷する痛ましい事故が発生しているが、近年においても、米軍航空機の緊急着陸や部品落下事故が絶えることがない。
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2004年8月に米海兵隊ヘリコプターが沖縄国際大学に墜落した事故を受けて、2005年4月に日米合同委員会において「日本国内における合衆国軍隊の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン」が合意された(以下「本ガイドライン」という)が、そこでは、事故が発生した際、事故機のすべての残骸、部分品、部品及び残渣物について、合衆国側が管理することと規定された。
本件事故においても、本ガイドラインにより、神奈川県警察は、米海軍関係者が本件事故現場に到着するまで、事故発生から約3時間、現場保存しかできなかった。このように、本ガイドラインは、日本の警察による初動捜査を阻むものであって、日本国の主権を不当に制限するものであるから、直ちに破棄されなければならない。
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なお、本年12月6日に成立した秘密保護法は、防衛や外交に関する情報について、行政機関が恣意的に「特定秘密」に指定することで、その情報は国民から隠蔽される。また、報道機関が取材をする場合であっても、ひとたび「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」とされれば刑事罰の対象とされる。
本件事故では、ヘリコプターが横倒しとなっていたにもかかわらず、当初は「不時着」と報道されていた。このように現状でも極めて限られた情報しか国民は知りえない状況であるところ、秘密保護法が施行されれば、その限られた情報ですら国民から隠蔽されるおそれが大きい。
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青年法律家協会弁護士学者合同部会は、今回の米海軍ヘリコプター墜落事故に対して強く抗議するとともに、日本国民や地方自治体に対して事故原因を速やかに公表して、米軍航空機事故の再発防止を図るよう強く要請する。そして、日本国憲法13条が定める生命に対する権利及び憲法前文が定める平和的生存権を保障するために、在日米軍基地の撤去を求める。 |
2013年12月27日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
議 長 原 和 良 |
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