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四日市公害訴訟判決の基本精神を再確認し、
原発事故による被害の完全回復と脱原発へ政策転換することを求める決議
−新四日市宣言−
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故は、広い地域の放射能汚染をもたらし 人々の健康と生活を脅かすという公害をもたらした。現在も、福島第一原発においては、放射能汚染水が増え続けており、放射線による健康被害への不安も払拭されないなど、原発事故による公害被害の収束の見通しは立っていない。
このような被害実態をみれば、原子力発電と人類が共存できないことは明らかである。

それにも関わらず、政府は、再び原子力発電を推進しようとしている。
安倍首相は、本年2月28日に行われた施政方針演説で 「安全が確認された原発」を再稼働させることを明言し、5月上旬にアラブ首長国連邦とトルコを訪問した際、原発輸出を可能にする原子力協定を締結し、同月末にはインドとの間でも同協定締結交渉の再開を決めた。
原発の再稼働を進め、海外にも原発輸出を進めようとする政府の姿勢は、福島第一原発事故による被害を顧みない経済優先のものである。

原子力規制委員会は、本年6月9日、新規制基準を決定したが、この基準は安全対策を軽視した、原発の再稼働ありきのものであり、規制基準として不十分である。
原子力規制委員会は、個人の安全確保を最優先に、原子力を管理すべきであるにも関わらず、その使命を果たしていない。

高度経済成長期の只中にあった1972年7月24日、津地方裁判所四日市支部は「被告ら主張の行為の公共性、排出基準の遵守、場所的慣行性、先住関係等の事由も、本件の被侵害利益が人の生命・身体というかけがえのない貴重なものであることを考えると、違法性を失わせるものではない 」として、いわゆる四大公害の一つである四日市ぜんそく被害者らによる被告企業に対する損害賠償請求を認めた。
この四日市公害訴訟判決は、国策として推進されてきた産業活動も、個人の生命・身体を侵害するものであってはならないことを明らかにした。この四日市公害訴訟判決の基本精神は、あらゆる公害事件に共通する普遍性を有するものである。
そうであるからこそ、中部電力を含む被告企業6社は、いずれも、この四日市公害訴訟判決の基本精神とその全趣旨を全面的に受け入れ、今後の企業の姿勢を根本的に改めるという反省のもと、控訴を断念したのである。

政府は、今一度、この四日市公害訴訟判決の基本精神と全趣旨に立ち戻り、原発事故や原発による放射性廃棄物が生命・身体を侵害し、地域社会と生活を破壊することを直視し、原発を国策として推進する姿勢を改め、早期に脱原発政策を進める
べきである。

青年法律家協会弁護士学者合同部会は1970年7月25日、26日に四日市市において第2回全国公害研究集会を開き 「われわれは、われわれのささやかな努力が全国民の支持を受けて、例えば安中における公害企業増設計画の阻止、富山、新潟等各地における訴訟上の成果ならびに住民運動の拡大や 「公害」絶滅のための周辺科学及び 、法理論の発展等となって実りつつあることに確信を持つとともに、われわれに寄せられる国民各層の期待が益々高まっていることを深く自覚して、さらに被害者と固く手を結び広範な勤労市民、科学者と連帯して「公害絶滅」のため献身的に奮闘することを決意し、内外に宣言するものである 」とする「四日市宣言」を発表した。
青年法律家協会弁護士学者合同部会は、改めて、この四日市の地で、四日市公害訴訟判決の基本精神の普遍性及び四日市宣言を再確認し、政府に原発事故による被害の完全な回復と脱原発へ政策転換することを求め、ここに決議する。
2013年6月30日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第44回定時総会
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