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国会議員定数削減に反対し、
民意をより適切に反映する選挙制度の実現を求める決議
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1 議員定数削減を求める自民維新政権
自民党、日本維新の会連立政権(以下、「政権」という)は、連立政権樹立に際し、2025年10月20日、基本合意を交わした。
この中で、「1割を目標に衆議院議員定数を削減するため、令和7年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」ことが明記された。また、日本維新の会の吉村代表は、国会議員定数削減を連立参加の「絶対条件」とし、また、比例代表選挙区の定数を削減することにも言及している。
そして、2025年12月5日、自民党と維新の会は、衆議院議員定数削減に関する法案を衆議院に提出した。法案の内容は、衆議院議員定数を現行の465から45以上削減するというもので、法施行後1年以内に法制上の措置をとるとしつつ、結論が得られなかった場合は自動的に、小選挙区25、比例代表20を削減し、定数を420とするというものである。
2 議員定数削減の問題点
(1)国会議員定数の削減に合理的な根拠がないこと
そもそも、国会議員定数を削減する合理的な根拠は挙げられておらず、政府、与党ですら、立法事実を説明できない状況である。
また、衆議院調査局第二特別調査室が4月に公表した「選挙制度関係資料集」(2025年版)によると、主要7カ国(G7)の立法府議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人であるのに対し、英国が4万6千人、フランスが7万人、カナダが8万7千人、イタリアが9万8千人、ドイツが11万9千人であるとされている。日本の国会議員1人当たりの人口は、G7の中で最低水準である。
したがって、日本の国会議員数は国際的に見ても少なく、これ以上削減する合理的な根拠はない。
(2)議員定数削減は、選挙において民意を反映させにくくすること
選挙は、民意を国会議員の議席に反映させることを通じて、民主主義を実現する制度である。選挙制度のこのような本質からすれば、できる限り民意を反映させる制度とするべきである。
国会議員の定数を減らすことにより、国会において民意の反映が後退するうえ、今回は比例代表選挙の議席が削減の対象として狙われていて、より影響は大きい。
すなわち、小選挙区選挙は、死票が多く、民意を反映させる機能は乏しいのに対し、比例代表選挙は、死票が少なく、民意を反映させるという機能を強く持っているからである。
民意が反映されにくい選挙制度であることは、政治に対する国民の不信や無関心を助長させ、是正されなければならない。
2024年10月に行われた衆議院議員選挙では、全国の死票の数は、2800万票(小選挙区得票の52%)を超えていたと報じられており、選挙制度を改定し、より民意の反映をさせやすい選挙制度とすることが急務である。
このような状況下で、より民意を反映させやすい比例代表選挙の議員定数を減らすことは、民意を反映させる制度とするべきという選挙の本質的要請に反するものであり、到底認められない。
(3)国会が持つ内閣を監視する機能も減衰すること
国会議員は憲法第43条で「全国民を代表する」と定められており、全国民の代表として、行政を監視する役割も担っている。
議院内閣制の下、与党の国会議員のうち一部は内閣に所属し、また、内閣に所属しない与党議員も行政の活動を支援する立場にあり、実質的には、野党の国会議員が行政監視機能を担うことになる。
第一次高市内閣では、大臣、副大臣、政務官、総理大臣補佐官の合計は80名以上である。
国会議員の議席を減らすことにより、内閣に所属する議員の割合が増えるとともに、相対的に野党議員の議席数が減り、国会の行政監視機能が弱まることが懸念される。
(4)「身を切る改革」という口実に理由がないこと
日本維新の会の吉村代表は、国会議員定数の削減は、「身を切る改革」であると主張している。
たしかに、国民の中には政治に対する根強い不信感を持ち、国会議員定数の削減を支持する声が一定数あり、世論調査によっては削減を支持する声のほうが多数である。
しかし、これは、特に自民党議員の裏金疑惑や汚職など、国会議員がその地位を利用して私腹を肥やし、国民の為に活動していないことに端を発した、国会議員が国民の収入に比して高い国会議員歳費等を受領していることに対する政治家不信の現れである。
国会議員の比例代表選挙の定数を削減することにより、国会議員が身を切ったことにはならないし、これによって国会議員の裏金問題や汚職がなくなることもない。
国会議員定数の削減、特に比例代表選挙区の定数の削減で最も影響を受けるのは少数政党であり、一般に少数政党は国民の少数者の民意を代弁し、与党の裏金や汚職の問題を追及することが多いことからすれば、国民の多数が削減に賛成しているからと言って削減をしてよいということにはならず、むしろ議員定数の削減は裏金や汚職の問題の追及を弱めることにつながりかねない。国会議員の定数削減は「身を切る改革」ではなく、「民意を切る改革」に過ぎない。
「身を切る改革」というのであれば、裏金や汚職につながりやすい、企業献金や政治資金パーティーなどを規制すべきであり、国会議員定数の削減は解決策にならない。
3 結論
以上より、当部会は、国会議員定数の削減に反対し、民意をより適切に反映する選挙制度の実現を求めるものである。 |
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| 2025年12月6日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 3 回 常 任 委 員 会
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